閑話341・『殺狐異臭』

御し難い、そもそも儂の可愛い娘であるキョウ―――儂と祟木を調教する事に夢中じゃ。


夢中なのは良いがそれでキョウの精神状態が安定しないのは胸が苦しい、エルフライダー状態が続くと心身のバランスを崩す。


キョウからしたらそれが本来の姿なのかもしれぬが……一人娘の身を案じるのは当然じゃろ、欠伸を噛み殺しているキョウ。


獣のように自身の体を丸めるようにしてベッドに転がっている、くしゅん、クシャミをしたキョウに近付く。


この子、儂のもの。


「くしゅんくしゅん、ずず」


「風邪かっっ」


「う、うるさいなぁ」


ベッドの隅に移動するキョウ、子離れを許さぬ母としてキョウを追い掛ける、狭いベッドの上、すぐにキョウを追い詰める。


風邪では無いか、エルフライダーの能力を酷使した事による熱――――女性体のキョウの管理も行き届かぬか。


全く。


「ほら、温めてやろう」


「もふもふ毛玉だぁ」


「そ、その言い方は止めてくれぬか……威厳が」


「喋るもふもふ毛玉だぁ」


「ぉぉ」


尻尾をキョウの前で振ると赤面したまま飛び込んで来る、狐の尾の毛量は多い、儂のはさらにモフモフ感が増量されておる。


キョウはそこに顔を突っ込んで尾の付け根に顔を擦りつけてくる。


「うわぁ、毛玉ぁ」


「その感想が母の心を傷付ける」


「もふもふ毛玉ぁ」


「その感想でも母の心は傷付く」


「すんすん、獣臭いっ」


「あう」


「良い匂いだぜ?」


ぽふ、毛玉から顔を出したキョウが後ろから抱き付いて来る。


頬を擦り付けるのだが熱い、やはり熱がある。


「うぁぁ、ぐらぐらする」


「よいよい、落ち着くまで一緒に寝よう」


「う、ん」


獣臭いか……獣じゃもん。


くすん。

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