閑話335・『人間と人参は一文字違いなので同じ味』
衝動的にやるせない気持ちになるのは仕方が無い、外の世界で餌を上手に得られなかった。
餌やり係も万能では無い、故にキョウは不機嫌そうに鼻を鳴らしながら部屋の隅で小さくなっている。
角に背中を預けながら小ぢんまりとした佇まい、私はそれを横目にしつつ心の中で溜息を吐き出す。
何コレ。
「キョウ、ご飯を食べられ無かったからって不機嫌になられても困るよ」
「ふんすふんす」
「レクルタンと同じでわかりやすいなァ」
母の遺伝を全開にしつつ荒い鼻息、レクルタンも興奮すると同様に小さな鼻を震わせて鼻息荒く動揺する。
そうだ、興奮しつつ動揺しているのだ………餌にありつけると思ったらありつけなかった、逃げたエルフは大きい?
しかしその不満を私に向け無いで欲しい、悪いのはあの餌やりトカゲだよォ。
「ふんすふんす」
「落ち着いてキョウ」
「俺はウサギだぜ」
「そうだね、レクルタンと同じうさ耳生えてるし、だから落ち着いて」
「落ち着く前に餅つくわ!」
「落ち着いて、それもウサギだよ」
お月さまにいるウサギとレクルタンは関係無いと思う、顔を真っ赤にして不満を口にするキョウ、私ならどうにかしてくれると思っているのだろうけどねェ。
この湖畔の街に残念ながら餌は無い。
「………お腹減ったぜ」
「ニンジンしか無いよ」
「ぽりぽり」
「食べるんだ」
レクルタンの細胞が活性化しているので生でいいかな?手渡すと凄い勢いで食べ始める。
「ニンジンだぜェ、ぐすん」
「人参だよ、人だよ」
「字面だけじゃん」
「んふふ」
「ポリポリ、ぐすん」
「ニキビも出来たんだから、不摂生を止めて野菜を食べようねェ」
「ウサギだから野菜しか食えないぜ?」
そりゃそうだ。
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