閑話334・『わしゃわしゃわいしょ2』

「キョウ、キョウ、キョウ」


「あはは、ちょ、止めてェ」


湖畔の街で役割があるとしたらキョウを愛でる事だ。


ベッドに引きずり込んで大型犬を撫でる要領で愛でる、愛撫とも言えない粗雑なコミュニケーション。


はぁはぁはぁ、キョウが荒い息を吐き出しながら俺の口元に手を当てて静止する。


「キョウ、ち、ちょっと待ってェ」


「よしよしよし」


「扱いが犬っぽい点についてっっ!」


「はぁ?」


「女の子の髪の毛をわしゃわしゃするものではありませんっ」


「……癖ッ毛の癖に」


「はあ?!」


「癖ッ毛の癖に……癖が二つもあってややこしいぜ」


「このっ」


「いたたたたたたた」


キョウに馬乗りにされる、そのまま乱暴に頭を撫でられる――――癖ッ毛なので指に絡み付いて辛いぜェ。


はげたら―――嫁に行けねぇ。


「は、はげるぜ」


「―――――」


「ごめん、ごめんだぜ」


「キョウは私に同じ事をしたんだからねェ、反省っ」


「お、おう」


「全く、なでなで」


「お前、俺に甘いよな」


「うっさいなぁ、もう」


正直に口にすると煩わしそうに頬を赤らめる、嬉しいのかウザいのかどっちだ。


グロリアやキクタも俺に甘いけど僅かなりの厳しさが垣間見える。


キョウにはそれが無い。


「キョウには甘いよ、とびっきりね」


「ふん」


わしゃわしゃわしゃ―――少しだけ優しく撫でられる。


でもちょい痛い。


「犬じゃねーぜ」


「ご、ごめん」


謝るぐらいならもっと乱暴にして黙らせてよ。

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