閑話330・『飼いキョウ2』

「ととととととととーーー」


「キョウ……お前も」


「自分でも驚きだけどねェ、そりゃ、同じキョウだから出来るよね、誰の細胞かな」


俺のペットはキョウです、今日はキョウをお散歩。


赤面しながら地面を軽やかに……俺をあれだけ罵ったのに。


「お前も四足行けるじゃん」


「まさかだよォ」


「やったな!」


「や、やったのかな……わかんないや」


照れたよう頬を掻くキョウ、こいつは俺に褒められるなら何でも嬉しいんだ。


女としてでも、ペットとしてでも、ふふ。


「四足行けないより行ける方が良いじゃん」


「う、うん」


かなり嬉しそうなキョウ、思えば可愛がってやる事はあってもこんなに素直に褒める事は少ないぜ。


嬉しそうにしやがって。


「うへへへ」


「獣が情けない顔するんじゃねぇぜ、凛々しくしろ」


「首輪がある時点で家畜だよォ、野生は捨てた」


「ちっ、四足なのに」


「ふふ、ととととととと」


「お、おい、走るなだぜェ」


「走るよ、野生でしょ?」


「そうやってすぐにあげ足を」


「足を上げても獣だもん、前足あるしねェ」


「生意気だぜ」


まるで灰色狐を散歩してるような気分、先に先に進んで早く早く追い付いてと強請る。


つ、疲れるぜェ、


「はぁはぁはぁ」


「あはははは」


軽やかに笑うキョウの頭上に灰色の耳が見える。


ああ、やっぱり……狐の細胞こわっ。

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