閑話329・『飼いキョウ』
「ととととととととーーー」
「キョウ……お前も」
「自分でも驚きだけどねェ、そりゃ、同じキョウだから出来るよね、誰の細胞かな」
首に巻き付いた荒々しい縄の感触だけは気に食わないが四足で移動する事に苦労は無い、それにキョウに見られるのは『大丈夫』なのだ。
他人が見たら殺すけどねェ。
「お前も四足行けるじゃん」
「まさかだよォ」
「やったな!」
「や、やったのかな……わかんないや」
あまり嬉しくない、女の子として人間としてこれはどうなのだろうと……しかしキョウの嬉しそうな笑顔を見ていたらどうでも良くなる。
ええい、ここまで来たらどうとでもなれェ。
「四足行けないより行ける方が良いじゃん」
「う、うん」
何だか納得出来無いけど足は軽やかに地面を……両腕も躍動するように動く、キョウを見上げると正に飼い主って感じで超然としている。
少しだけドキドキする、少しだけ。
「うへへへ」
「獣が情けない顔するんじゃねぇぜ、凛々しくしろ」
「首輪がある時点で家畜だよォ、野生は捨てた」
「ちっ、四足なのに」
「ふふ、ととととととと」
「お、おい、走るなだぜェ」
「走るよ、野生でしょ?」
「そうやってすぐにあげ足を」
「足を上げても獣だもん、前足あるしねェ」
「生意気だぜ」
忙しない動作で私の後を追うキョウ、んふふふふ、汗を流して可愛い。
はっ?!四足楽しくなって来たっ。
「はぁはぁはぁ」
「あはははは」
飼い主を急かす犬の気持ちが分かったよォ。
わんわん。
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