閑話327・『才の違和感』

四つん這いで散歩を『してみたい』と言われて息を飲んだ、させるのでは無くしてみたい。


何処から見付けたのか毛先の立った荒縄を持って来て自分の首に巻き付けた、キョウの柔肌に簡単に食い込み色を変える。


まさかこの先端を持って私に『散歩』をさせろと?湖畔の街は綺麗に舗装されてはいるが地面は煉瓦細工のソレだ、平面では無い。


足が擦り剥けるのは容易に想像出来る。


「イテェぜ」


「いや、散歩される方だと思ったよォ」


「いや、メインは俺だ」


「………犬のように四つん這いになる方がメインとは言わないでしょう」


「俺からすれば飼い主が付属品だぜ」


「主の時点で違うと思うなァ」


しかしキョウが私の言葉に耳を傾けないのは何時もの事なので散歩を開始する……ととととととととと、軽快なキョウの走りを見て眩暈を覚える。


心配した以上に四つん這いによる歩行に慣れている、手首と足首を上手に曲げて全身の重みを緩和するように歩く、犬や猫のように所作に無駄が無い。


心配して損したァ。


「ととととーーー」


「おーい」


「とととととととととーーーーーー」


「あのぅ」


「とととととととととととととーーーーー」


「き、キョウちゃん」


何故かちゃん付けしてしまった、理由は不明、しかし効果があったのかキョウが振り返る。


「どうしたんだぜ」


「いや、四足歩行が見事過ぎて若干ひいてるんだよォ」


「ほう」


「うん、二足に未練は無いのかなァ?」


「?」


「あまりに違和感無いからさ」


「………灰色狐の細胞のせい?」


「あの子は二足歩行です」


「レクルタン」


「二足です」


「………狐とウサギなのに」


「二足です」

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