閑話324・『熊リア』

芸を仕込まれたので芸を披露する、キョウはお腹をポリポリ掻きながら何だか興味無さそう。


く、口にするのも恥ずかしい芸までしたのに何だその態度っ、しかし睨む事も出来ずに項垂れる。


ポリポリポリポリ、キョウのお腹を掻く音が室内に木霊する、白磁の肌に赤い線が走る、げ、下品だし痕になるからっ。


「うん、キョウの芸も飽きたな」


「んなぁ!?」


「……嬉ション」


「それは芸じゃなくて躾の行き届いていない犬の生理的なものだよね」


「躾の行き届いていないキョウ」


「あん?」


「な、何でもねーぜ」


立ち上がってキョウの横に座る、そもそも私を躾けるのも支配欲によるものなのか自分自身に対する被虐的思考なのかわからない。


どちらにせよ最初は私がキョウを躾けるつもりだったのに上手くいかないものだ、そしてキョウ的には躾は上手くいってるのだろう。


同じキョウなのに理不尽、服の乱れを整える。


「グロリアも躾ければ良いじゃん」


「お前、無理だろう」


「え」


「犬や馬の目を見てみろ、躾けれる動物だってわかる、知性でも無く感性でも無く……人と共存出来る生き物だって」


「う、うん」


「熊の目を見てみろ、あの人間を何とも思ってない共存不可能の目」


「う、うん」


「グロリアと同じだろ?」


「た、確かに」


共存不可能のガラス玉のような瞳、犬や馬のようなものとは違う、根本的にわかりあえない絶対的な差。


熊を家畜には出来無い、例え飼う事が出来ても家畜には成り下がらない、グロリアと同じ瞳だ、強者であり捕食者の瞳。


無理だねェ。


「本人には伝えたのォ?」


「伝えたぜ……喜んでた」


「え」


「……グロリアはクマたん見たいで可愛いって」


「言い方っ、オブラートっっ」


「……本音はクマみたいに他の生き物を餌としか見てねぇぜ」


「それを言いなさい」


「死にたくねーぜ」


そりゃね……そのグロリアに対する気遣いを私にも少しだけ……無理かぁ。

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