閑話315・『餌可愛い』

キョウと一緒に湖畔の街をうろうろしつつ現状を口にする。


っても食べたいものを言い合うだけのゲームに成り下がって意味が無い。


「ケーキ」


「エルフ」


「クッキー」


「ダークエルフ」


「えっと、蜂蜜たっぷりの紅茶」


「臓物たっぷりの魔物」


「うーん………あっ、かき氷」


「冷凍漬けした人間」


「ちょいまち」


「あん?」


「つかちょいでは無く、かなり待って」


「?」


キョウに向かい合う、同じキョウだけどここまで……しかしエルフライダーとしてはキョウの方が正しい、しかし女の子としてはどうなんだろうか?


胸の幅の肩から肩までの外側で着る独特の修道服は一切の穢れの無い純白、グロリアと同じ修道服、しかし発言の内容はとてもシスターのものでは無い。


ある意味グロリアに似てる、規格外のシスター。


「キョウ、女の子なんだからもう少し可愛い食べ物を―――」


「幼いエルフ」


「待て」


可愛いの方向性が違う、キョウは鼻の頭を掻きながら戸惑っている、叱られているわけでは無いとわかってはいるようだ、そう、叱るのでは無く窺っている。


どうしたものかとねェ、ベールの下から見える金糸と銀糸に塗れた美しい髪が風に揺られて踊る、太陽の光を鮮やかに反射する二重色、黄金と白銀が夜空の星のように煌めいている、見る者を魅了するような美しい髪。


瞳の色は右は黒色だがその奥に黄金の螺旋が幾重にも描かれている、黄金と漆黒、左だけが青と緑の半々に溶け合ったトルマリンを思わせる色彩をしている、全体的に線が細くて儚げな少女。


シスターである事は疑いようが無いがシスターの枠に収まるような個性でも無い…そう、問題は中身だ。


「もっとこう、具体的に可愛い食べ物を言おうよォ」


がんばれ私。


「祟木」


「それご飯?」


「灰色狐」


「それ狐」


「……あ、キョウ!」


「私は可愛いけどご飯では無い」


赤面しつつ答える。


も、もう……可愛い、か。

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