閑話309・『影不意ちゃん最強』

あくあくあくあく、雨が降り注ぐ、湖畔の街には珍しい。


気持ち良さそうにカエルが鳴く声がする、メスを求めてオスが鳴く。


俺はメスなので妙に体が疼く、しかし呼んでいるのはこのオス達では無い。


「ゲロゲロ」


「ゲロゲロ」


「き、キョウに返事したわけでは無いぜ」


「ああ、そうなのォ、私に抱かれたいのかと思った、ゲロゲロって、メスを呼んでみた」


「め、メスって俺の事か?」


「そだよォ」


そりゃ俺しかいないよな、暖炉の前で椅子に揺られながら書物に視線を走らせるキョウ、速読、読み終えたら暖炉に捨てる。


ササや祟木の知識から形成された湖畔の街の書物、読めば実体験として様々なものが脳裏に刻まれる、しかしキョウは興味無さそうだ。


あの二人の知識ぐらいならキョウにもあるものな。


「影不意の本は良いね」


「そうなんだ」


「うん、あの子はいい」


「じゃあ俺じゃ無く影不意抱けば良いじゃん、ばーか」


「え?え?」


「バカっ」


つい苛立って苛立ちのままに言葉を投げ掛ける、キョウは目を白黒させて戸惑う、そんなに影不意が好きなら影不意にゲロゲロ鳴いてろ、くすん。


フラれてしま。


「あ、あの、そーゆー意味で言ったんじゃないよォ」


「バカ」


「影不意はほら、可愛いけど」


「うぅ」


「い、いやいや、可愛く無いけどォ」


「ああん?影不意可愛いだろ!」


ついつい嫉妬も混ざって『ちゃん付け』出来無い、あの子を呼び捨てにするとドキドキする。


ドキドキ。


「えぇぇええ」


「影不意『ちゃん』の悪口言ったからキョウきらーい」


「えぇぇ」


えぇぇぇ、ずっと言ってるし。


うるさい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る