閑話308・『のうみそがえる2』

「ぁぁぁぁ」


頭の奥の方が痛い、知っている誰かが、出ようとしている。


ああ、そうか、俺の頭は卵なのだ、中からヒナが出ようとしている。


大好きだった彼女が、ヒナが殻を割るように、俺の頭蓋骨を割ろうとしている。


「落ち着いてキョウ、まやかしだよ」


「ぁぁぁぁぁ」


膝枕をして撫でてくれるキョウ、しかしそこに優しさは無く、何かを牽制するような動き。


何をしているのだろう、孵ろうとしているのに。


俺の所に孵ろうとして帰ろうとしている。


かえろう。


かえる。


「ぁ、かえる」


「湖畔の街だからね、いるかもね」


「ち、ちがう、あたまの」


「頭の中には脳味噌があるよ、カエルはいないね、残念ながら」


「いるもんっ!」


怒りのままに吐き捨てる、しかしキョウは涼しい表情で流す、どうして、こんなにも。


こんなにも言ってるのに。


「いないいない」


「うぅ」


「いるわけがない」


「―――――――」


「キョウはおバカなんだから、変な事を考え過ぎると頭の病気になっちゃうよォ」


「あ」


「カエルはいません、よろしいですかァ?」


他人のような口調で大事なモノを奪う。


あ、すっきりする。


すっきりしたら。


きえる。


「お、れの」


「ナデナデ、消えろ消えろ」


「アク」


「消えろ」


消えないで。

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