閑話307・『のうみそがえる』

「ぁぁぁぁ」


頭の奥の方が痛いとキョウは言った、黒くて悪いカエルが頭蓋骨に内部から罅を入れるんだと口にした。


泡を吐きながらのたうち回る、今日はどうも『彼女』が騒がしいようだ、キョウが思い出そうとしたせいだ。


ここにいるよと脳味噌から腕を伸ばす。


「落ち着いてキョウ、まやかしだよ」


「ぁぁぁぁぁ」


膝枕をして撫でて上げるが何も変化は無い、思えば私もキョウなのだから彼女に対して何か思う所が―――無いよね。


道端で馬車に潰されて死んでいる蛙を見ても何も思わない、汚いな、死んでるな、それだけ。


私にはそれだけなのに。


「ぁ、かえる」


「湖畔の街だからね、いるかもね」


「ち、ちがう、あたまの」


「頭の中には脳味噌があるよ、カエルはいないね、残念ながら」


「いるもんっ!」


奇声、しかし耳に手を当てずにそのまま撫で続ける、キーンってしたよォ、そうそう、いるよ、いるけど認めてやらないだけ。


いると認めたらキョウを奪うだろお前。


そのまま消えてろ。


「いないいない」


「うぅ」


「いるわけがない」


「―――――――」


「キョウはおバカなんだから、変な事を考え過ぎると頭の病気になっちゃうよォ」


「あ」


「カエルはいません、よろしいですかァ?」


泣きそうな表情をしても無駄、そのカエルは暫くすると冬眠に入るからねェ、んふふ。


頭を撫でるのは脅しだ、キョウにでは無く、頭蓋骨を砕こうとしているバカに。


調子に乗るなよ。


「お、れの」


「ナデナデ、消えろ消えろ」


「アク」


「消えろ」


消えてしまえ。

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