閑話297・『せかいきらいんどじん2』
キョウを抱き締めながら耳元に鼻を寄せる、くんかくんか、甘い匂い。
俺がミツバチなら喜んでいるぜ。
「キョウはバカだなぁ」
「そう、だよ」
「俺の方が賢いもん」
「そう、です」
「ほんとぉに、そう思ってる?」
「キョウの口にする事は全て信じてるよ」
確認事項だ、どちらが正しいのかを何度も問い掛ける、だけどキョウは真剣に愛情を込めて呟いてくれる。
そこに嘘は見当たらない、なのに不安になって何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も問い掛ける。
ああ、お手の時と同じだ、嬉しいのに不安が消えない。
幸せなのに不安が消えない。
愛してるのに不安しか無い。
「ほんとかな」
「ほんとだよ」
「……ほんと、かな」
他者には言えない、だけど自分自身だから言える、その言葉に裏が無いか素直に問い掛ける事が出来る。
他者には出来ない、そんな事をすれば嫌われてしまう、そんな事をすれば置いて行かれる、何時だって俺は笑顔で全てを受け入れないと。
でもキョウは疑う俺を許してくれる、どうして、俺って、私って、それだけの理由?
わからないよ。
「ほんとかな、キョウ」
「愛してるよ、本当」
「?」
「私だけはキョウに嘘を言わない、俺だから、私だから」
「うん、捨てないでね」
「――――――キョウにそんな台詞を言わせるようになった世界が嫌い」
キクタの事かな、キクタの事は今でも大好き。
ずっと好き、永遠に好き。
でも、捨てられるのは俺。
すてられるのは、おれたち。
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