閑話296・『せかいきらいんどじん』
躾ける側が躾けられる側に転落するのはどうしてだろう、理由は簡単で私はキョウを傷付けられない、キョウの傷付いた顔を見ると思考が停止して死にたくなる。
そんな顔をさせた奴を殺したくなって殺したくなって世界が歪んで足は震えて吐きそうになる、でもキョウは違う、平気で私を傷付ける、平気で私を苛める、平気で私の髪を引き抜く。
そこが違い、故に反転。
「キョウはバカだなぁ」
「そう、だよ」
「俺の方が賢いもん」
「そう、です」
「ほんとぉに、そう思ってる?」
「キョウの口にする事は全て信じてるよ」
口説いているわけでは無い、口説かれているわけでも無い、罵られているわけでも無い、単純な確認作業だ、自分の言葉を信じてるのか言葉で問い掛ける。
その時点で子供だ、信用の本質は相手の機微や行動で示されるべきで言葉で示されるものでは無い、だからキョウは何時も裏切られる、キクタに捨てられた時もそうでしょう?
あの路地裏で待ってろと言われて、待って、死んで、でも私は違う、そんなキョウの幼稚さを愛してる。
全部好き、だから言葉が嘘にならないように死ぬ気で暗躍する。
ぜぇんぶ、大好きな女の子の為。
キョウの為。
君の為。
「ほんとかな」
「ほんとだよ」
「……ほんと、かな」
不安そうな声、疑うのでは無い、まるで消えかけの蝋燭を見ているような……意味合いとしては『消えないかな』だ。
そこに本質がある、疑っているのではない、終わりがある事を理解している。
一人置いて行かれる日を知っている。
蝋燭の終わりを知っている。
知らなくて良いのに。
「ほんとかな、キョウ」
「愛してるよ、本当」
「?」
「私だけはキョウに嘘を言わない、俺だから、私だから」
「うん、捨てないでね」
「――――――キョウにそんな台詞を言わせるようになった世界が嫌い」
キクタ、殺す。
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