閑話294・『お上お手2』

机の上に座りながら半身を見上げる、普段なら行儀が悪いと怒る所だが今は立場の上では俺の方は―――んふふ。


躾けるのは頭が良い動物の方が面白い、低能な動物より高位の動物の方が良い、頭の良い動物はとても良い、とても良い。


頭の良いキョウなら尚更だ。


「んふふ、お手」


「……」


ぽふ、お手をさせるの楽しすぎる、何でも出来るキョウをお手如きで褒めて赤面させるの楽しすぎる、何もかもが楽しすぎる。


あり得ない程に愉快だ、お前は色々出来るのに、お手で褒められて喜んでやがんのォ、だったらその頭脳も美しさもいらねぇじゃん。


腕だけあればよろしい。


「偉い偉い」


「ありがとぉ」


「ありがとうじゃないだろ?」


「ありがとう……ございます」


「んふふ」


キョウの横腹を突く、引き締まった感触と僅かな弾力、無駄の無い猫科の動物を思わせるしなやかな肉体。


猫の癖に犬じゃねーか、ばーか。


「上手上手」


「キョウ、嬉しい?」


「嬉しいぜ、俺より賢い俺自身のキョウが愛玩動物に成り下がって」


「成り下がって?」


「俺の方が上だと、わかる」


「さ、最初からそうだよォ」


「お手」


「あう」


「あははははは、バーカ」


「キョウの前だと何時でもおバカだよ」


「ふふっ、可愛い」


お臍の辺りを指でグリグリする、衣服と擦り合わせるように。


「ばぁーか」


もっと罵ってやる。


何も考えられなくなるまで。

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