閑話292・『お手のひらがえし2』

「お手」


お仕事中?のキョウは手帳に何かを書き込みながら思案顔、真面目な表情はとても俺と同じ個体とは思えない。


その前に立って腕を差し出す……少しきつめの口調で呟くとやっとキョウが顔を上げる、困り顔、どうしようもないものを見る目。


「やだよォ」


「お手だぜキョウ」


否定されても即座に命令する、躾に相手の機微はどうでも良い、何度も何度も躾ければ良いだけだ、俺は微笑みながら命令する。


キョウだってこんなに強制的だったぜ?。


「しないよォ、忙しいから後でね」


「……」


「うっ」


「……」


無言かつ涙目で見詰める、子供のように対処されて妙にプライドが傷付く、そもそもキョウがこれを始めたのに何だその態度っ。


ぐす、鼻水を啜る、俺は間違っていないのにキョウがあまりに理不尽な態度をするのがいけないんだ、俺は悪くない、何時だって悪くない。


悪いのは何時だってキョウだ。


「ぐすっ、お手」


「うっうっ」


「キョウ、お手」


「―――――――――」


「お手しないと、嫌いになるもん」


「っっ」


「絶対嫌いになるもん」


「き、キョウ、落ち着いて」


「お手!」


「は、はいぃいいいい」


何度も要求すると流石のキョウも折れる、しかし何処が起点になったのかはわからない、柔らかくて少しひんやりとした掌の感触。


それは俺を満足させるには十分なものだ、命令を実行させた実感で幸せな気持ちになる、お前はそうやってお手をしてれば良いんだ。


ばーか。


「え、えへへへ」


「ご、ごめんねェ」


その後何度もお手をおねだりした。


満足。

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