閑話291・『お手のひらがえし』
「お手」
キョウが吸収した一部や特徴、さらに影響を事細かくノートに書き込んでいたら突然キョウにそう言われる。
んん?最近同じようなことがあったようなァ、ああ、私がしたんだっけ、状況は全く同じ、蝋燭の火が二人の体の動きに呼応するように揺れる。
ムスッ、不機嫌以外の何ものでも無い表情、ずっと反逆する機会を窺っていたんだろうなァと思うと可愛く思える、白磁の肌は容易く蝋燭のオレンジに染まる。
毛穴すら見当たらない人工物めいた美しさを持つ掌を見詰めながら顎に手を当てて頷く、そして発する。
「やだよォ」
「お手だぜキョウ」
しかし全く戸惑う事無くキョウは呟く、ニッコリ、さわやかな笑顔だが目は笑っていない、潤いのある桃色の唇も時折ピクピク痙攣する、何かえっちだよォ。
うーん、腕を組んで思案する、どうして今更……確かにここ数日は犬を躾けるように様々な手段でキョウを躾けた、しかしまさかこのような手段で反逆されるとは。
反逆つーか反抗だね、コレ。
「しないよォ、忙しいから後でね」
「……」
「うっ」
「……」
無言かつ涙目で見詰めて来る、邪険にしようにもソレをされると容易く根本から崩される、これは無自覚なものだ、キョウの天然ものの涙、打算が無い。
ジーっ、可愛い女の子に涙目で責められる男性の気持ちが理解出来る、視線を逸らそうにも泣いているキョウが心配で視線を逸らせない、ああ、どうしよう。
折角ここまで追い詰めたのに即座に全てを奪われた。
「ぐすっ、お手」
「うっうっ」
「キョウ、お手」
「―――――――――」
「お手しないと、嫌いになるもん」
「っっ」
「絶対嫌いになるもん」
「き、キョウ、落ち着いて」
「お手!」
「は、はいぃいいいい」
ぺし、やや強めのキョウの一言に呆気無く砕けるプライド、そもそも同じキョウだからプライドも何も無いけど。
にへらぁ、泣き顔から笑顔になるキョウ。
「え、えへへへ」
「ご、ごめんねェ」
その後何度もお手をおねだりされた。
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