閑話290・『おててをつないでおぺぺを2』

「ん」


「ふえ」


差し出された掌にキョウは首を傾げる、戸惑いを隠そうとしない、それでいて何かを疑うように目を細める……暫し無表情、美しい顔が無機質になるとより美しくなる。


まるで人形のようだ、しかも人間の血肉を使った肉人形、精巧に誠実に作られた――――綺麗。


「な、何だぜ」


「ん」


「だから何だぜ」


「お手です」


「は?」


「キョウがあまりに我儘なので躾ける事にしたよォ」


ニコニコ、取り敢えずはお手から始めようと思う、少しずつ少しずつ時間を掛けて躾ければ良い、なぁに、時間は無限にあるもんねェ。


んふふ。


「え、えへぇ」


「あら、可愛い」


「えへへ」


「お手」


「う」


「可愛くてもお手が出来ないとねェ」


キョウが突然蕩けるように笑う、だらしのない笑み、男だったら即座に恋をする、女だったら即座に恋をする、そんな全てを内包する笑み。


全てを魅了する笑み、でも本人には残念ながら通用しないよォ。


「お手」


「お、おれは人間だぜ」


「お手」


「――――――――――」


「お手が出来るキョウ、可愛いと思うよォ」


掌を見詰めてプルプル震えるキョウ、まるで雨に濡れた子犬だ、勿論子犬より可愛いし、そもそもキョウ以外を可愛いとは思わない。


みんな肉の塊に見える、やがてキョウが掌を差し出す。


「うぅ、これでいいのかよ」


「うん、可愛い」


最高の触り心地。


肉球みたい、にゃんにゃん。

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