第464話・『こいごころん』
人外を超越した人外、それでいて見た目はどのような存在よりも美しい、勇魔と呼ばれる存在、初めて会ったのは何時だったか。
妙に月が綺麗な日だった、拉致されて監禁されて秘匿されて能力を良いように使われていた、良いように使われている事実すら知らない子供だった。
世話係も門番も一瞬で肉の泡になって消えた、そして肉の泡が肉の花になって地面から生えた、恐ろしい光景だがその肉の花は妙に良い匂いがした、毛細血管が張り巡らされ油に塗れていたけど。
来襲者は『勇魔』と名乗った、世界の英雄である勇者と世界の敵である魔王の能力を兼ね備えた化け物、この異様な光景もその能力で?震えが止まら無かった、男と聞いていたが女にしか見えなかった。
攫われて勇魔の城で生活する事になった、理由はわからない、使徒と呼ばれる破壊の生き物も美しい、しかし思考の偏りがあるような気がする、勇魔も含めてだ……仕方が無いので召使いのように振る舞った。
勇魔は不思議な奴だ、あれだけの力を持ちながらどうして自分を救い出したのだろう、本人曰く地上であまり派手にやり過ぎると天上から恐ろしい生き物が来るらしい、意味がわからない、空には何も無いだろうに。
故に駒が欲しかったと言った、時期が来るまでここにいろと言った……勇魔は一日の大半を自分の部屋で過ごす、飄々とした態度からは想像出来無い程に『なにもかも』おかしい、何もかもがおかしいのだ。
全てに興味が無い、自分にも、生み出した使徒にも……使徒の一人に聞いたのだが興味が無いのでは無く『興味』の対象が一人に縛られているらしい、ずきん、何故か胸が強く脈打つ、こいつなどどうでも良いのに。
勇魔が時折覗いている映像は一人の少年の成長記憶だ、田舎も田舎、辺境も辺境、人間として最低限の生活をしている褐色の少年、彼を見る時だけ勇魔の頬に朱が走る、喜怒哀楽が表に出る、表に出ている。
自分といる時は朱は走らない。
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