第463話・『かわいいめすにゃのん』
緑水晶(みどりすいしょう)で構築された自分だけの煌びやかな世界、細かい角閃石等が水晶中に含まれる事で全体が緑色を呈色して見える水晶は見ていて飽きない。
サソリの姿のまま敵のアジトに侵入、アジトつーか最終地点?無駄に広い空間、無駄に広がった世界、むだむだむだむだ、あの狂った地層からは想像出来無い美しい世界。
ここに俺を『空間転移』させた化け物がいる、んふふ、ああああああああああああああああああああああ、おとうとのにおいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい。
暫く歩くとそこに一人の少女が佇んでいるのがわかる、幾つもの魔法陣を空間に構築しながら薄く微笑んでいる、錬金術師?それとも別の何か?なによりなによりおとうとのにおい。
におい。
におい。
れいはわたしの。
おれの。
こいつのじゃないです。
『キョウ、落ち着いてェ、ただものじゃないよ』
『こいつはえさ、ただでくえるえさ』
『そのただじゃないつーの』
空五倍子色(うつぶしいろ)の髪は左右で束ねてそのまま肩に流している、魔力を放つ度にゆらゆら揺れる、探索の魔術を使っているようだがサソリ化&妖精の透過で捉える事は無理だろう。
五倍子(ごばいし)で染めた灰色がかった淡く薄い茶を由来とする色合いの髪を注意深く観察する、れいがしゅきそうないろ、れいがしゅきそうないろ、れいがしゅきそうないろ、おれのかみよりすき?
五倍子は白膠木(ぬるで)の木に発生する虫の瘤の事だ、中が空洞になっている事から空五倍子と名付けられた、これを細かい粉に加工して染めた事からこの色名になったと言われている、むしむしむし。
いまむしなのはおれえ、さしょり、れいはしゅき、さしょり。
『かわいいめす』
『あまり近付いたら駄目ェ』
『れいのにおいしゅきぃ』
『確かにバカなあいつの匂い』
『れいはかしこい』
『そう』
『じまんのおとうとにゃのです』
生成色(きなりいろ)のソレは細く細く細められている、何も色彩を与えられていない木綿のような少しだけ赤みがかった白色のソレは見る者を安心させるような色彩なのに奥に潜んだ人間の悪意のせいで台無しだ。
あくい。
あくい、
あくいならこいつよりおれのほうがあるもん。
れいもおれのほうが、おれのあくいのほうがすきだもん。
『こりょす』
『そう♪』
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