第462話・『傘傘傘主人公傘』
鉄の扉が幾つも続くので『さっそくサソリ』になってドアの隙間から侵入する……そう、水晶巨大化形態もあるが通常のサソリ状態もある。
これで敵に気付かれ無いように移動して一気に命を刈り取るのだ、通常のサソリ状態も残しているとか作り手は優秀だなァ、普通は『素材』を加工して消したいはずなのに。
んふふ、しかもサソリ以外にも多くの節足動物の遺伝子が内包されている、確かにサソリだけではあの動きも泳ぎ方も不可能だったものな、近しい種なら他の細胞も良く馴染む。
この奥にレイの女がいる、んふ、かわいいおねえちゃんからおとうとをとるやつはころしゅにょ、にょ、んぷぷぷぷぷぷぷぷぷ、なていてるとこをなぐさめたらすぐになびく、ぬぷぷ。
状況に応じて様々な姿に変化する、かなり儲けもの。
『かさかさかさ』
『キモッ』
『一部つーか何だろ、まあ、変化出来るようになったぜ』
『キモいよ……』
『わはは』
節足動物の多様性は異様に高い、なのでどのような環境でも生きていける、また分類によって様々な外見的特徴を持っている、皮膚の表面はクチクラと呼ばれるキチン質とタンパク質の混合物で構成された外骨格で包まれている。
滑りと『てかり』のあるそれがドアの隙間で引っかかる事無く全てをすり抜ける、この体便利だな、便利なのにキモいとは失礼だぜ、ちなみに成長に合わせて体が大きくなる時は『脱皮』によって古い外骨格は脱ぎ捨てられる、逃亡時に擬態に使えるぜ。
新たな外骨格は即座に構築される、体は体節の繰り返し構造になっているので何処を切り落とされても一応は行動出来る、つまりは体の表面を包む外骨格も体節単位で構築されている、その各体節からは一対の関節肢と呼称される付属肢が生えている。
『かさかさかさかさかさ』
『今までで変化出来るもので一番キモイよ』
『バカ言え、泣きべそかいて甘えて来る灰色狐もそこそこキモイぞ』
『それ本人に言ったら自殺するよ』
『バカ言え、冗談だぜ、鬼可愛い』
『……それ本人に言ったら興奮で死ぬよ』
『どっちみち?!』
様々な節足動物に変化出来るようになったのは良い事なのにキョウはあまり嬉しそうでは無い、暗闇でも触手を動かせば状況が読めるし、一気に水晶巨大化で敵を粉砕出来るし水中も無敵要塞だしー、良い所しかねぇぜ?
関節肢が震える、体と同じように外骨格で包まれていて間に関節がある、変化する事で関節肢の分類を理解する、歩脚・触角・鰓・遊泳脚・鋏・鎌・顎・など多様な功能に応じて色んな形に変化する、これは素晴らしい、これは便利だ。
関節肢の基本は内肢と外肢をもつ二叉型のようだ、変化してもどの種のそれも大体コレだ、ササの記憶を同時に読み取る、現生節足動物の中にこの特徴を明瞭に保持しているのは甲殻類のみ、故にどのような変化をしても大体コレ。
他の多くの分類群は内肢しか保持しない単枝型のようだ、そして過去に世界に存在していた三葉虫とマーレラの歩脚は全て二叉型と確認されている、故に水中でのあの動き、か。
んふふ、便利。
『先祖の功績ばんざい、水中ばんざい』
『あー、水中の姿もキモいよォ』
『このままボスの所まで水の中だろうが陸だろうがカサカサ移動だぜェ』
『うぅううう』
『カサカサ』
『やだよォ』
珍しく半べそのキョウだった。
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