閑話287・『生ニンジンエターナル』

狐の母親に甘えて改造ばかりしてたらウサギの母親が嫉妬した、苔の母親は何も言わない。


「んー」


「膝枕デス」


「ぷにぷに」


「それは良い事デス、ん?良い事デス?」


「さ、さあ」


魔王や勇者は過去に遡る程に強力に凶悪になる、邪精覇(じゃせいは)はその中でもさらに古き魔王の一人、そしてその血を唯一継いでるのがレクルタンだ。


邪悪な妖精を使役して多くの人間や魔物を殺した同族殺しの姫、その子供であるレクルタンは驚くほどに穏やかで驚くほどに優しい、子供が出来たからか?


俺が出来たからか?


「外出たいんだけど」


「外は雨デス」


「それでも出掛けたいんだけど」


「女の子が冷たい雨に濡れるのは駄目デス、赤ちゃん産めなくなるデスよ」


「孫か」


「いらないですけどデス」


「え」


僅かな黄色が溶け込んだ白色の髪、卯の花色(うのはないろ)のソレは清廉で清潔で清純だ、人々に愛される色。


空木(うつぎ)の木に小さく咲く初夏を告げる可愛らしい花の名を冠した色、卯の花は雪見草とも呼ばれている………小さな花が健気に咲き誇る様が雪のように美しいからだ、しかし空木とはまた笑える、枝の内部が空洞である事からその名を与えられた。


お前の中には『俺』が沢山いるのになぁ。


「いらないんだったら出掛けても良くね?」


「駄目デス、どうせ灰色狐を召喚するデス」


「う」


「狐よりウサギにしときなさいデス」


「いや、あの、それは」


「狐は危ない菌を持ってるから………ね」


「うぅ」


卯月(うづき)に製造されたのでこの髪の色を与えられたらしい、卯月とは卯の花が咲き誇る季節を指す……その卯の花色の髪の上には同じ色合いのウサギの耳が生えている。


ウサギって意外と嫉妬深くて凶暴なんだよなァ。


「わ、わかった」


「じゃあ、ニンジン食べるデス、生で」


「え」


「ぽりぽりぽり、美味しいデス」


「ぽりぽりぽり、う、うめぇ」


生より火を通したい。


うぅ。

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