閑話283・『 望む殺人、望む殺人、望む愛人2』

春の息吹を感じながら丸まって眠る、くんくんくん、良い匂い、お花の匂い、春の匂い、俺の匂い、キョウの匂い。


くんかくんか、まどろむ。


「キョウ、酷いなァ、女の子をあんなにしちゃあ」


「んあ」


「あ、起きた」


話し掛けられたので起き上がる、しかし思考が追い付かない、鏡合わせの自分を見詰める、手で寝て良いとサインを送られる―――しっしっ、犬を追い払うかのように。


わんちゃんなので、ねるわふ、わふわふ。


「そのままで良いから聞いてねェ」


「んあ」


「……灰色狐は祟木を殺したいだろうし」


「ん」


「祟木はキョウをお嫁さんにするとか雑魚の自覚無しで発言してるし」


「んー」


「どうすんの?」


「んー、んふふ、あいされてるなぁ」


「喜んでる場合じゃなくて」


責められて攻められて咎められている、しかし前のように力尽くで俺を支配したりはしない、んふふ、ありがとぉ。


だけど嬉しいんだから仕方無いよね、俺の為に俺同士が殺し合うのはとても嬉しくて楽しい行事なんだもの、仕方無い。


ふひ。


「よろこぶよ、おれは」


「そう」


「きょうは、おれのためにだれをころしてくれるの」


「え」


「ぐろりあぁ?」


お気に入りを殺そうとしたのは記憶に新しい、でも最終目標はそこでは無いよね。


そんな所で満足されたら困るんだよ?


「いいよ」


鏡合わせの自分は軽く答えた。


燃えるような瞳で。

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