閑話282・『望む殺人、望む殺人、望む愛人』

最近のキョウは原点に回帰するように初期の一部にご熱心だ、特に祟木と灰色狐の開発に余念が無い。


放置される私、久しぶりの湖畔の街なのにキョウは疲れて寝ている、別に良いけどねェ……すやすや、小高い丘の上で春の訪れを感じさせる若葉をベッドに……。


小さな鼻が時折何かを求めるようにピクピク震える、餌を求めているのかな?残念ながら私はキョウの餌にならない、二人で同じ容量なのだから食べても膨らまないし。


しかし灰色狐は兎に角……あの祟木をあそこまでぶち壊したものだ、感心するよりも呆れる。


「キョウ、酷いなァ、女の子をあんなにしちゃあ」


「んあ」


「あ、起きた」


左右の違う色合いの瞳が注意深く細められる、目尻には涙が……起き上がってうつろな表情でこちらを見詰めるので手で寝て良いよと促す、まるで動物だ、しかも呑気な動物。


そのままこてんと転がる。


「そのままで良いから聞いてねェ」


「んあ」


「……灰色狐は祟木を殺したいだろうし」


「ん」


「祟木はキョウをお嫁さんにするとか雑魚の自覚無しで発言してるし」


「んー」


「どうすんの?」


「んー、んふふ、あいされてるなぁ」


「喜んでる場合じゃなくて」


誰もキョウを止められない、グロリアだけか……後は私かキクタ、キョウの暴走は望む所だけどあまり一部を増長させるのも良くない、麒麟の件もあるしねェ、あと餌やり係のあのバカ。


権利を与えるとそれだけその権利を使ってキョウを求めて来る、だけど何度注意してもキョウは……それだけ愛されたいのだろう、母親に地上に落とされてキクタに置いて行かれて弟に改造された。


誰でも良いから愛されたい、愛してる者同士が殺し合うのを見たい。


それって普通の事でしょう?


「よろこぶよ、おれは」


「そう」


「きょうは、おれのためにだれをころしてくれるの」


「え」


「ぐろりあぁ?」


壊れた笑みだ、笑みではないのかもしれない、でも笑みだ。


私には笑って見える。


「いいよ」


望むならね。


望んでるのは私。

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