閑話280・『光と闇と毛並み2』

尾の毛づくろいをする、楽しくてついつい狐の姿になってしまう。


うきゅん、楽しい。


「ぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろ」


ふと気配を感じて振り向く、灰色狐がヘビに睨まれたカエルのように停止する、お前は狐だろう、カエルでは無い。


かえる、あく、かえるはあく。


「きゅーん」


「良く聞くのじゃキョウ、毛繕いはβ-エンドルフィンの放出を促進する、故に肉体と精神を馴染ませる緊張緩和の効果が期待出来る、故に体中を細かくケアする必要があるのだが『いい加減』なやり方ではそれを得られないのじゃ』


「きゅーん」


「幼体が自ら行うよりも母親による毛繕いの方が効果が期待出来るのじゃ、一説では標識組織のグルココルチコイド受容体が増殖する成果が見られているのじゃ、つまりは親が子の毛繕いをする事で『精神の安定』と『肉体の調和』を与えれる!」


「うざい」


「甲状腺刺激ホルモンとセロトニンの濃度が急激に変わる事で受容体数も同時に変化する、受容体数の急激な増殖は副腎皮質ステロイドの分泌に対して『マイナス面』を減らす、つまりはストレスの軽減へと繋がる――――母の愛でストレスの無い生活、どうじゃ、説明終わりっ」


「……」


「どうじゃ!」


「うるせ」


「え」


「うるせ」


「え、ええ」


「自分でするからあっちいけ」


俺が頭が悪いのでさっぱりわからん、畜生の狐の脳味噌に入る内容では無い。


しかもうるさい。


「せ、説明を」


「長くて眠たかった、ぺろぺろ」


「うぅ」


「おれ、あたまわるいから、わからん」


「うぅうううう」


「?そのなんとかを放出するのはおれがなめてもいいんじゃね?」


「ふえ?」


「ぺろぺろしちゃるー」


「や、やめ」


唾液くさくしちゃる。


へんなせいぶんだせ、おら。

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