第444話・『こりょす』

そりゃ戦力を分散するよなあ……気付かれたと認識した瞬間に空間が歪み景色が変わる、俺だけ転移された?顎に手を当てて唸る。


他の一部は離れた場所にいてもすぐに体に戻す事が出来るが土岐国栖は少々特殊、完全な一部では無いので体に戻すのに時間を必要とする。


一時間は必要だな、冷静な自分が判断する、景色は変われど薄暗い洞窟には変わり無い、収納作業を急ぎながら足を進める、いたたっ、処理が重たい。


あいつ、戦闘力で言えば俺の一部の中ではそうでも無い、祟木の次ぐらいに処理が軽いかと思えば他者である為に情報の読み取りに異常に時間をっ。


狂わないようにしないと、エルフライダーにっ。


『キョウ、しっかりねェ』


「が、がんばる」


『そのまま無視してれば良いのに』


粘度と糖度のあるキョウの声が自制心を崩壊させようと俺を刺激する、あう、隙あらばっ、弱者に成り下がった俺は抵抗出来ずにキョウの支配欲に刺激される、あうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあう。


あいつは、見捨てないっ、生きている、麒麟の電光でシールドを構築、その中で丸まっている様子を遠視する、神の御業の前に地上の生物は何も出来無い、あいつが取り込み終わるまでコレで……しかしその無茶のせいで俺は一部を使えない。


洞窟の中にどうして雪があるのだろう、これもまた転移させたのか?足取りは重く思考も定まら無い、これをどうにかするには早々に餌を食わないと、エルフとは言わない、贅沢は言わない、しかし強い個体を心の底から欲する、ほすい。


『おとうとの、ちっ、あいつの気配がするねェ』


「れい、たべる」


『本人じゃないかもよォ』


「しゅきしゅき、あいしてるからたべりゅ」


『あのバカなら今の台詞だけで絶叫して絶頂して絶命するかもねェ』


「れいしゅき」


何かしらの作業道具が落ちている洞窟内、先程とは明らかに様子が違う、より深度が深まった?本道は別として細分化された細道が横に広がる、しかしそこには立ち入り出来無いように粗雑に岩が積み上げられている。


採掘できる鉱物が枯渇した閉山?道具が置かれたままなので休山の可能性もあるがその錆び付き具合から見て可能性は低い、単純に鉱物を採り尽くしたとも考えられるが妖精の探知では水晶のようなものの『息遣い』を感じる。


まだ鉱脈が確実に残っていて何らかの方法でそのその確認も済んでいるが深度が深すぎる事を考慮して閉じてしまったとも考えられる、地熱の影響による退避も考えられるがそもそもそれでは雪が広がっている事が矛盾だ。


その時点での採掘技術では採取が不可能である為に閉山したとも考えられるか?


「うにゃにゃにゃ」


『レイの匂いだね、匂いのする女だ、メスだね』


「れいのおんなのこ」


『キョウ』


「こりょす、れいのおんのこはおれだもん」


『キョウ』


「れいをとるおんなはおねえちゃんがこりょす」


『あ、ああ、これはまずいかも』


「こりょす」


こりょすよ、れいはそんなおねえちゃんがだいすきだもんね。


ね。

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