閑話277・『旦那さんにするわけねぇだろ、シネ』

一夫一婦制を営む生物は多い、この際だ、狐は置いといてエルフライダーはどうだろうと思考する………だけど娘の様子を見ていても男を得ようとする様子は見られない、単一で完成されている種なのかも知れない。


配偶関係、それを考える、餌やり係のアレはそれだけ可能性が高いのか?雌に対して保護や食物の供給を行うのが伴侶としてのオスの仕事だと考えれば確かにあのポジションは大切だ、特別扱いされるのもわかるがあまり嫉妬しない。


しかし深く考えればやはりおかしい、餌をやる、それはつまり投資だ、雌の繁殖活動を考えれば雑務は雄の仕事である、先祖から受け継いだ自身の遺伝子を持つ子孫をより多く残す為に必要な繁殖戦略をとるものと認識するのが『普通』だ。


「と言うわけじゃ」


「はあ」


「儂だってキョウにおっぱい上げてるから旦那じゃね?って話じゃ」


「その前に母だろうテメェ」


「ん?些細な事じゃろう」


「些細じゃねぇーわ」


「母であり旦那のポジションも出来る儂ってキョウの伴侶じゃね?って話じゃ」


「う、論理で攻めるのはやめてくれぇ、ば、バカだから、負けるかも」


「ふはははははは、負けたらキョウは儂の嫁じゃ」


「こわっ」


さらにキョウに聞かせる、無論ベッドの中で丸まりながら何度も何度も執拗に……ふふ、つまり遺伝子をどのようにして後世に残すかだ、先程述べたものをさらに簡略にするとより多くの雌と配偶関係を得る事で多くの子孫を残すのだけが最良では無い。


あの一部の成り損ないのように特定の雌に対してある一定の資源の投資を行う事で将来性の幅が大きく広がる、計画的に述べるならその雌との間に生まれた子供をより安全に成長させる事が……いちいちあの成り損ないで考えねばならんのがムカつくのじゃ。


「しかし儂はそれに加えて母でもあるからな、あの餌やり係などゴミじゃ、ゴミ」


「あいつお気に入りだから悪口はやめて」


「う」


「やめろ」


「は、はいなのじゃあ」


「ふん」


「ちっ」


「あん?」


「うぅ」


短いやり取りに全てが含まれる、うぅ、つまりキョウ……エルフライダーもこのような繁殖戦略を取る動物ではあるって事じゃ、うーん、しかし雄も子育てにおいて給餌を行う種、主に鳥類が代表的なものなのじゃ。


エルフライダーは、キョウは、天から落ちて来た神の子、鳥、神、羽根?天使、エルフライダーはやはり……このような繁殖を遺伝子に刻まれているとは……地上の動物では雄がどれだけ雌に投資する餌を獲得出来るかで遺伝子に淘汰がかかることが多いと聞く。


つまり投資する餌を獲得出来無い様な劣等な雄が雌とともに形成した番いは繁殖に失敗する可能性が高い、自然と未来に残せる自分の遺伝子を持つ存在も減ってしまう、そして雌の世界ではより確実に餌を確保出来る雄を求めて闘争が行われることもある。


エルフライダーの場合はそこは逆転する、キョウを求めて――――ああ、一人しかいないからな、愛するべきメスが、♀が、キョウが。


「つまりキョウは雄を支配する女王様」


「お前ら全員メスだよな?」


「はて」


生やせるじゃろう、キョウなら。


それを、一部に。

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