閑話271・ 『嫁になるか旦那になるか』
「段々不安になって来た」
「自分で蒔いた種でしょ?自分で解決なさい」
「えぇええ」
「な、情けない声を出さないの」
キョウに相談したら思いの外に冷たくてついつい項垂れてしまう、腕を組んだキョウは俺の話をちゃんと最後まで聞き終えて冷たく呟く、最後まで聞いてくれるのなぁ。
手櫛で髪を整えながら不貞腐れているキョウにどうにか……た、助けてくれェ、胸の幅の肩から肩までの外側で着る独特の修道服は一切の穢れの無い純白なのに心の中は真っ黒だからなぁ。
「俺の話より髪を整えるのに夢中なんてショックだぜ」
「何時だって可愛くいたいもん」
「ちっ」
「舌打ちは女の子にNGだよォ」
ベールの下から見える金糸と銀糸に塗れた美しい髪、太陽の光を鮮やかに反射する二重色、黄金と白銀が夜空の星のように煌めいている、見る者を魅了するような美しい髪、俺と違ってきちんと整えられている。
瞳の色は右は黒色だがその奥に黄金の螺旋が幾重にも描かれている、黄金と漆黒、左だけが青と緑の半々に溶け合ったトルマリンを思わせる色彩をしている、全体的に線が細くて儚げな少女、シスターである事は疑いようが無いがシスターの枠に収まるような個性でも無い、
「やだやだやだやだ、キョウ助けてくれないとやだぜ」
「うっ、可愛い」
「こんなに我儘に暴れているだけなのに可愛いとか女は意味不明だぜ」
「………何かムカつくなぁ」
「だってそうじゃないか」
古びた宿の一室で問い掛ける、キョウは形の良い顎に手を当てて思案顔、何時も俺を助けてくれるのに今回の件はどうにもな、少しだけ寂しいぜ?
「何だ、そっちこそ生意気だぜ」
「そうかなァ」
「もしかしてキョウも旦那さんになりたいのか、俺のさ」
「うぐっ、惜しいっ」
「惜しい?」
「そっちじゃない、そっちじゃないよぉ、私は女の子のキョウだよぉ?!」
端正な顔を蒼白にさせて胸倉を掴んでくるキョウ、あまりの勢いに俺は驚いて目を瞬かせる、え、え、え?
「このぉおおお、バカバカバカ」
「はっきり言え」
「お嫁さんだろぉおおお、もぉおおおおおおお」
頬を膨らませて力説するキョウ、どいつもこいつも俺の旦那になりたいって言うから忘れてたぜ。
ふふん。
「じゃあお嫁さんが二人かぁ、誰に貰ってもらおう」
「わかってないよね!」
わかってるぜ?
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