閑話269・ 『狐の子供の子供』

「どうしたものか」


「何がだよ」


背中に感じる温もり、あー、灰色狐の体温は狐だから高いのか子供だから高いのかわからん、膨らみを何も感じない凹凸の無いソレ、あーあ。


「結婚式じゃ」


「――――――」


「結婚式じゃ」


「誰の」


「儂とキョウ」


少し肌寒いのでこの姿勢になったわけだがなる程、全くわけがわからん、どうして俺とお前が結婚する事になっているのだろうか?そもそも近親相姦は反対だ。


こわっ、逃げようとするが絶妙な力加減と方向性で締め上げて来る両腕のソレが俺を逃がさない、漆塗りを思わせる艶やかな腕と足が俺を固定している、こわっ、こわっ。


けっこん、こわっ。


「うぐぐぐぐぐぐぐぐぐ、嫌だぁあああああ」


「反抗期かの?」


「うるせぇ」


「儂は繁殖期じゃ」


「ご、ごめんなさい、勘弁してください」


「自然の摂理じゃ」


「……」


ギリギリ、締め付けられる現状と耳元で囁かれる甘い呟きに喉が鳴る、油断していたら最悪の状況になった、このまま力尽くで『されるのは』ごめんだ、麒麟の細胞を活性化させて逃げちまおうか?


そもそも式を挙げても誰も来ないだろう、いや、殺意全開のグロリアは来るだろうけど……こわっ。


「その前に祟木と決着をなぁ」


「……嫁の片目を抉る夫などおるまい」


「嫁を拘束してる狐が言えた事かよ」


狐なのに蛇のように自然に絡み付いて来る、煩わしい、柔らかな肌の奥には底知れない力強さを感じる、灰色狐には多くの『種族』の特性が入っているんだもんな、そーゆー生き物。


だったら俺との子供が出来たらエルフライダーの素養も受け継ぐのかな?そしたら少しは―――――――――。


「赤ちゃんは欲しいぜ」


「な、なんじゃと」


「お前と赤ちゃん、いいぜ」


そしたら寂しく無くなるかなぁ、そしたら一人じゃなくなるかなぁ。


そしたら。


「うぁああ、キョウ」


体を擦り付けて来るので何だかウザったかった。

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