閑話263・ 『どっちにでも嫁入り』
実に困った、ここまで困ったのは久しぶりだ、溜息を吐き出しながらキョウを抱き締める。
結婚しようと娘に口にする母親、呆れを通り越してどうしたものかと頭を抱える、灰色狐、ここまで狂っているとはな。
愛情も行き過ぎたら己を狂わせる、あれは狐だ、人の道理など通じるはずもない、悩みを聞いてあげればスッキリした顔をするキョウ、しかし祟木はスッキリしない。
嫉妬に狂うだけだ、キョウが望むからこのような弱い自分になった、キョウが望めば望むだけ弱い自分に成り下がる、キョウに頼らないと行けない自分に………………。
「お嫁さんは嫌だぜ」
「そりゃそうだ」
「いや、もっと遊びたい、もっと色んな娘と遊びたいのに何が悲しくて母親と結婚しねーとダメなんだぜ」
「ごもっとも」
「そうだろ、んふふ、背中ぽんぽんして」
「はいはい」
「灰色狐と結婚してもいいけど、まだな」
「ん?」
流せない台詞があったような、キョウは甘えるように胸に顔を押し付ける、白磁の肌が服に………、いや、問題はそこではない、問題はキョウの言葉の中にある。
結婚しても良い?苛立ちが胸の奥からふつふつと湧いてくる、自分にこのような感情があった事に驚きつつキョウの背中を撫でて続きを促す、あれ、もしかしてもう終わり?
け、っこん、か。
「親子同士で結婚はどうかと思うな」
「そうか?まあ、俺を大切にしてくれるなら」
「だったら祟木でいいじゃないか」
「ん?」
「祟木ではダメか?」
「い、いや、だめじゃないけど、どうした、いきなり」
「いきなりは灰色狐も同じだろう?何より、こっちには負い目がある、女性の体を傷付けた負い目が」
「ま、真面目は似合わないぜ」
「それは建前で利用する算段さ、そうでもしないと灰色狐と……許せないな」
「ゆ、許せないんだ」
嬉しそうで悲しそうで判断しにくいキョウの呟き、そうやって異性や同性を惑わして生きている。
そうしないと生きていけない。
危うい生き物。
「ふ、ふーん、ふーん」
「だから灰色狐よりこっちの方を意識しなさい」
「う、うん、努力する」
努力は嫌いでは無いからな。
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