閑話261・『近親狐高』

「おめめ治ったー」


「めでたいのじゃ!」


「おめめ直った?」


「そ、そんな自分を物みたいに言うで無い」


俺は俺って物だろうに、灰色狐の、母親の言い分が納得出来ずに頬を膨らませる。


見っとも無いから止めなさいと良くキョウに注意されるのだが灰色狐の前だから平気だ、こいつが俺を叱るわけが無い。


「視界が広いぜ」


「目が回復した事と『行われた事』は切り離して考えんとなァ、儂は許さんよ」


「えー」


「えー、と言われても仕方無いのじゃ、血の繋がった我が子を……しかも嫁入り前の」


「え、お嫁に将来的に行っていいの?」


「儂の所に」


「え」


「儂の所にじゃから」


「え」


「何時でも良いぞ」


「………近親相姦は駄目だろ」


無い胸を張って指を立てる灰色狐、まさか俺が『正論』を言う羽目になるとはな、目を瞬かせて溜息を吐き出す灰色狐、そもそも同性だし、どんだけ罪深いんだよお前。


ベッドに座っている灰色狐の尾にブラシをしてあげながら呟く、綺麗な毛並みだ、とても素敵、左右に揺れる様がこいつの感情を表している、親子水入らず、ふふふふ。


「しかしの、キョウ、儂は可愛い」


「しかしも糞もねーよ」


「娘のキョウも可愛い」


「お、おう」


「二人の子も絶対可愛いのじゃ」


「………何処から否定すればいいんだぜ」


「何処も否定する所は無いのじゃ」


何処かしこも否定する所しかねーわ、こいつ、俺をお嫁さんにするつもりだったのか。


狐の嫁入り、嫁は子狐、旦那は母狐。


つみぶかっ。


「罪深すぎる」


「♪」

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