閑話260・『パンツ見せる仕事の主人公』
何だかんだで祟木は壊れかけで、灰色狐も壊れかけで、キョウは満足で。
だったら口出しするような事も無いだろう、キョウが満足なのだ、私が不満足なわけは無い。
蝶々を追い掛けて湖畔の街の周辺にある原っぱで走り回るキョウ、捕食者としての習性か、単に幼児化しているのか。
段差があるから危ないよと忠告しても無視して全力疾走、あれだね、転んで泣いても手当てして上げないからねェ、全く。
「転ぶよー」
「へぶっ」
見事に転んだ、パンツ丸出しだし、白か……目に焼き付けながら溜息を吐き出す、先程まで手出ししないと決めていたのについ小走りになってしまう。
草の匂いと過ぎてゆく風、雲の流れが穏やかで日差しも丁度良い、そんな和やかな世界で和やかにパンツ丸見え、白か……はっ、さっきも同じ事を思ったよぉ?!
しかし、見事に白だねェ、凝視。
「いたたたた」
「大丈夫?」
「顔面から行っちゃったぜ、んー、平気」
立ち上がりながら体に付着した土やら草を叩いて落とすキョウ、あれだけ見事に転んだのに無傷とは……顔に巻き付いた包帯から僅かに血が滲んでいるだけ、それは以前からだ。
祟木を縛り付ける為だけの演出、灰色狐を壊すための装置、ソレに対しては何も言わないけど視界が狭まればバランスも崩れる、だから転んだんじゃないのォ?本当に困った。
「キョウ、修復しなよ」
「お、何をだ?」
「それ」
「どれ」
「おめめ」
「おめめか……それって言うなよ」
「どれって言う方が凄いよねェ、そこしか無いじゃん」
「ペチャパイを修復しろと言われたのかと」
「その場合は修正とか修整でいいんじゃない?」
「天然ものなのにそれは酷いぜ」
顎に手を当てて唸るキョウ、そのままでも別に良いけど日常生活に……祟木は灰色狐にばれているしねェ、困ったモノだ。
キョウ一人だけが意識しちゃってさァ。
「うーん、これ、初めて祟木が俺を壊してくれた証なんだ、不便だけどもう少し楽しみたい」
笑う様は何処までも純粋で何処までも歪でどうしようも無い。
だからこう呟く。
「パンツ、見せ放題になるよ?」
「え」
最近転んでばっかだもんねェ。
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