閑話257・『尻尾を箒にして放棄』

苛立ちを舌打ちに変えて少し痣のある体を撫でる灰色狐、挑んで負けたか?普段は外にいる一部だが俺の中で祟木を殺そうとしたらしい。


らしいってのはキクタからの情報で曖昧だからだ、しかし納得、そうか、殺したいのか、俺の片目を抉った生き物を殺したい、それは全うな願いだ。


殺れヤレ殺れヤレ殺れヤレ殺れヤレ殺れヤレ殺れヤレ殺れヤレ殺れヤレ殺れヤレ殺れヤレ殺れヤレ殺れヤレ殺れヤレ殺れヤレ殺れヤレ殺れヤレ殺れヤレ殺れヤレ、つい呟いてしまう。


尾を丸めて意気消沈してるかと思いきや表情は残忍性と残酷性を内包しつつ母性に溢れている、素敵な表情だ、しかしキクタとキョウ相手では無理だろうな、何せ俺より強いし、キクタなんか下手すりゃグロリア並だ。


俺はその様子を足を遊ばせて観察する、しかし俺に相談も無く祟木を襲うとは本来なら――――でも今回は特別、母の子を想う心を想えば全てを否定は出来無い、仕方無い仕方無い仕方無い、仕方無く無い?んふふ。


「灰色狐、怪我してる」


「ああ、少し、な」


「強い奴らにいじめられたか?俺が虐め返してやろうか?」


「そんな事はせずとも良い、それよりも傷を癒すのが先じゃ、儂の可愛いキョウ」


「片目が無くても?」


「可愛いキョウ、否定をする奴がいれば母に言え」


「?どうするの?」


「どうもせんよ」


俺が傷付く事を先読みして否定するのは流石だな、ぜってー殺すだろうお前、しかし麒麟と良いキョウと良いみんな最近好き勝手するなぁ。


キクタにもう少し、そう、キクタもキョウを勝手に―――――どいつもこいつも、何時だって俺を裏切りやがる、ぷんぷん、死にてぇ、殺してぇ。


どいつもこいつも俺も。


「祟木に手を出さないでよ」


「き、キョウ?」


「足をバタバタさせるのたのしー」


「可愛い……では無く、キョウ!」


尻尾を逆立てて叱るように……叱る?お前が俺を?そんなわけ無いよな、それに仕上がりは上々なのだ、こんな、家族みたいなことはさ。


ああ、こいつは家族だったぜ、ああああ、少し頭痛い。


家族って、なんだっけかな。


かぞく。


「かぞくだもんな」


「そうじゃ、いたたっ、派手にやりおって」


「そうか、じゃあおれがしかえししてあげる」


かぞくをきずつけた、はいいろきつねはかぞくのおれをまもるために、だからおれも。


しないと。


「はぁ、しなくて良い、それよりも母の胸に甘えとけ」


「むにゅ、ちいさい」


「す、すまん」


むすめよりはおおきくなろうよ。

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