閑話256・『壊れかけなのに壊れない』

覇気に満ちた少女は覇気を失って澱んだ瞳で世界を見る、具現化しても俺に謝るばかりでどうもな、どうも―――――――――都合が良い。


キョウが何処かで溜息を吐き出すのが聞こえる、安宿の一室で謝罪されても暗くなるだけだ、軋むベッドがさらに陳腐な演出、狭まった視界にももう慣れた。


それでも謝るのは大好きな俺に嫌われたく無いからだ、謝罪する事で自分の心の重荷をどうにかしようとしている、俺の目が再生しても潰した事実は変わら無いからな。


一部に体を蹂躙される事がこのような効果を生むとは、好意を逆手にとるとこうも楽しいものなのかは?楽しい、面白い、祟木に授乳して貰いながら思う、思ってしまう。


「ゆっくり飲むんだぞ」


「おう」


「―――――」


「お前のコレ飲んでたら意識しなくてもその内に再生するだろう、出鱈目だから、コレ」


自分の体を物のように、しかしそれは仕方が無い、俺自身も良く仕組みがわかってないのだ、この体がどのようなものなのかを……同じ生き物がこの世界にはいないしなぁ。


しかし何となく回復しているのはわかる、ふふ、意識すれば一瞬で再生するんだけどなァ、放置していても勝手に再生するらしい、全てを俺の自由には出来無い、もっと祟木を苦しめたいのに。


上手に出来無いぜ?


「俺さ、こうやって片目潰させてのも、祟木汚染してるのも、全部お前が俺無しで生きていけない阿呆にする為なんだ」


「……」


「祟木って何でも自分で出来て自立してるじゃん、ムカつく、死ね」


「………」


「俺に甘えて?」


「わかってるさ、最初から――――」


「え、恨む?憎む?嫌いになる?」


「あるわけないだろ」


優しい笑み、そう、少しだけ見え隠れする自信に溢れた祟木、まあ、いいんだ、素直に伝えたかっただけだし全て伝わっていたのならそれでいいんだ。


ベッドの上でちゅーちゅーちゅー、ペッタンコなのにミルクと母性が詰まっていて凄いな、俺の胸には悪意と憎悪しか詰まって無いのに、仕様が違うのかな?んふふふ。


「どうして、そこまでプライドへし折られて」


「ああ」


「変なの」


「好きって気持は何でも凌駕する、愛しているって想いは容易く全てを受け入れる」


「あん?」


「あはは、キョウが好きだからもっと虐めて欲しいって事さ」


「っ」


「飲んで虐めて、キョウはヤンチャだな」


やっぱり祟木は凄いな、壊しても壊しても元通り。


何度でも遊べる。

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