閑話254・『キョウちゃん的に許し難い』

久しぶりの湖畔の街の視界も半分、ふふふふふふ、キョウは出会い頭に『やりすぎだよ』と言って来た。


何がやり過ぎなんだろう、キョウも片目を失って包帯をしている、写し身だから当然と言えば当然だよな、うふふ。


抱き締めようとしたら手の甲を叩かれて断られる、どうしたんだろうか、お前の大好きなキョウが目の前にいるのに。


まあ、すぐに甘くなる。


「祟木と灰色狐、あまり壊し過ぎると肉体と違って修復出来無いよ?麒麟のようにさ」


「ふーん」


「キョウ」


「ふーーーん」


俺はクスクス笑いながらキョウの周りをくるくる回る、何処までも広がる青空と煉瓦の絨毯、気分は最高だ、仕上がりも上々だ。


なのに半身が俺を責め立てるのでどうにも納得出来無いよね?キョウは訝しそうに目を細めるだけで何も答えてはくれない、何も教えてはくれない。


だって全部わかってるから。


「祟木が壊れるのも灰色狐が壊れるのも楽しい事じゃん」


「それは」


「キョウだってこの前嫉妬で壊れたじゃん、見事に、そう、あれは良かったなぁ、あれは可愛かった」


「……否定は出来無いけどねェ」


甘ったるく、そして一度精神が折られた者特有の倦怠感、折ったのは俺で折られたのはキョウ、そう、泣きじゃくるキョウは可愛かった。


他の存在に俺を奪われる恐怖を想像して狂うキョウは面白くて可愛かった、またあれを見たいだけなのにどうして俺を責めるの?お前が可愛かったからまたしたいのに。


どうしてどうしてどうしてなのぉ。


「キョウ、捕まえた」


「ふふ、説教は聞かないつもりだよねェ」


「そりゃそうさ」


「……壊し過ぎるんじゃないよォ」


「ふーん」


「こら、また上の空」


同じ存在が同じ存在を抱き締めている、ソレだけの事なのに凄く落ち着く、そもそも俺に説教するのなんてグロリアかお前しかいない。


だから特別。


だからの特別。


「キョウは黙って見てて」


「はいはい」


「でもちゃんと叱って」


「わかってるよォ」


叱って、怒って、いいんだから。


お前は。

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