閑話244・『嫉妬する王子様にばーか』

それを言われて自分の胸の内に溢れる感情が理解出来無かった、そもそも胸から母乳が溢れているが……現実と精神的なソレが交わる。


久しぶりに具現化されたキョウに『飲み比べ』と言われて胸に『イラッ』としたものが芽生えた、痛みと言っても良い、いや、キョウに母乳を与える役割を半分譲ったのは祟木だ。


それなのに最近は具現化してくれなかった事に不満を?服を破くキョウ、その腕力に驚きも無く、人外である事を当たり前として受け入れる、ベッドに押し倒されてそのまま綺麗な顔が胸に近付く。


久しぶり、すする、なぶる、のみこむ、キョウの頭に両腕を回して全てを受け入れる、役目を半分捨てたのは自分だ、そう、あの視線が、灰色狐の視線に折れた……それなのに、わかってしたのに。


今はこうやって満たされる。


キョウに飲んで欲しい。


矛盾。


「んぐぐぐぐぐぐ、すげぇ出る、こわ、壊れた蛇口か、あははははははははははは」


「………………キョウ、口に血が……拭ってやろう」


「ああ、さっきまで食ってたからな、エルフ」


「そうか、それは良い事だな」


「祟木は?」


「何が?」


「祟木は俺に相手されなくて辛かった?」


「っ」


「答えて」


誰かに何かを強要されるような事は無い人生だったから強要ばかりして来るキョウに戸惑いを覚える、何時もの様に朗らかに笑って煙に巻けば良いのに胸の痛みがそれの邪魔をする。


同時に胸の疼き、母性をくすぐられる。


この子は。


「……灰色狐のあれは、その、美味しかったのかな?」


「ん、祟木のと比較して?」


ちゅぱ、唾液の透明の糸が自分の胸からキョウの唇に伸びている、これと全く同じ光景を灰色狐も見たのだろうか?見ていたとしてそれが祟木にとってどうなのだろう?


どうしてこんなにもイライラするんだ、論文を否定されても、子供だと卑下されようとも、こんな気持ちにはならなかった、今まで一度も………胸が痛い、甘い疼きもある。


何がなんだかわからない。


「どだろ、両方美味しいよ」


「――――――――――そうじゃなくて」


「どうした、何時もの様に王子様然としてろよ」


「それが出来無いから、こうして」


「……それが祟木の嫉妬した表情か、初めて見た、んふふ、不細工」


「っ」


「嘘、可愛いぜ」


答えて欲しのに。

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