閑話233・『虐めてポニー』

なぶられる、何処までも何処までも、プライドを一枚一枚剥がされて壊されてゆく。


キョウの言葉は何処までも的確で適当で矛盾を抱えたまま祟木の心を蹂躙する、ベッドの上で絡み合う。


身長差、体格差、言ってしまえば多くの『それ』があるが『それ』を忘れてしまう程に執拗に虐められる、喘ぐ。


自分の声が遠くで聞こえる、キョウのポニーテール、まるで興奮した犬のように左右に揺れる、月明かり、刺し込む光が白い肌を青く染める。


キョウの瞳がゆっくりと細められる………舌先がヘビのそれのように楽しそうに震える、主の望むがままに自分を『忘れる』のは好ましくは無い、誇りを奪われる。


一人で学者として生きて来た、他者を頼った事は無い、それでも類稀なる頭脳と異常な精神性で全てを乗り越えて来た、いや、他者から言えば乗り越えたのだろう、自分からしたら?


最初からハードルなんて無かった。


「ばーか」


「う、あ」


だからこうやって虐められて小馬鹿にされて見下されるのは『どうしようもない』程にどうすればよいのかわからなくなる、キョウの望む反応が出来ているのか?


そもそも同性でこのような行為をして何の意味があるのだろう、非生産的である、しかしながら行為は好意になり愛情は無限に溢れて来る、このような仕打ちを受けるのは―――嫌いでは無い。


誰かにここまでなぶられて見下されるのは……それが自分自身であるキョウなのだから受け入れる、嬉々として喜々として受け入れる、キョウの指が何かを弾く、全身に快楽が走り塩に蛞蝓のように縮小する。


弓なりに弾けて縮小する我が身を呪う、もっと大きくなりたい、そうすればキョウを抱き締めて安心させたげれるのに、今の自分では玩具として『使って』貰う以上の事は出来無い、悲しい、ああ、キョウはこんなにも不安に……。


そう、最初に褒めて上げなかった自分が悪い。


「あんあんあん」


「―――――――――――」


「あんあんあんあん」


「――――――――――――」


「あんあんあんあんあんあんあん」


「――――――――――――――――」


「あんあんあんあんあんあんあんあんあんあんあんあんあんあんあん、鳴いちゃってさ、バカじゃないの」


「っあ」


「何時ものカッコいい祟木じゃないじゃん、かっこわるい、ださい、げんめつした」


「い、いわないで、やめて」


「うるせ、なけ」


「ぁぁぁああああああああ」


弾かれる、そこが自分の『捩子』なのだろうか?玩具である我が身は喜びでまた弾ける、キョウは見下している。


虫を見るような目では無い、虫の死骸を見るような目でも無い、まるでそこに何も無い事を責めるような目、もっと倦怠感に満ちている。


左右の色違いの星に諦めのそれが浮かぶ。


「俺の事好き?お返事は?」


「はいぃいいい、お、お慕いしてます、た、祟木の、ああ」


「うんうん、俺の王子様は今日も可愛い」


「ぁぁ」


「んふふふふ、ポニテで虐める」


「ぁ」


何度も何度も愛を叫ぶように強要される。


嬉しかった。

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