閑話227・『お化粧の無駄』

「キョウちゃんがお化粧―――」


「祟木にして貰ったんだぜ」


「あ、口紅」


「うへへ、似合う?」


「………可愛いよ、とても」


「そ、そーだろう!」


「でも少し困るかな、キョウちゃんまたいろんな人に『お誘い』されそう」


「う」


影不意ちゃんを召喚して自慢する、可愛いだろうと問い掛ければ素直に頷く、抱っこして欲しと言えば素直に抱っこしてくれる、サイズ差がえげつないが俺を抱えて影不意ちゃんは満足そうだ、見上げる。


ポニーテルを手で遊びながら影不意ちゃんが薄く微笑んでいる、グロリアにも見せたいが影不意ちゃんにも見せたかった、すんすんすん、何だか頭の天辺がくすぐったい?


「良い匂い」


「つ、旋毛を嗅ぐな」


「?キョウちゃんは僕にするよ?」


「俺は影不意ちゃんの本体だから別にいーの」


「うん、学習した、すんすん」


「学習してねーぜ!?」


「難しい」


「いやいや、影不意ちゃんが普段読んでる書物やらと比較したら物凄く簡単な事だぜ」


「?もっと難しいよ、絶対」


「う、うそだぁ」


「ふぁ」


眠そうに瞼を擦る影不意ちゃん………しかし肩腕はしっかりと俺のお腹に巻き付いている、虚空の様に何も映さない瞳が特徴的だぁと思う……村に立ち寄った商人が売っていた『海緑石』のような灰緑色の瞳――目尻に涙が溜まっていて眠そう。


巻き付いた腕を見る、肌は日の光を知らないのかと問いたくなる程に青白い、少し透けて見える血管もガラスの繊維の様に頼りなく思える。


「影不意ちゃん、相変わらず白いなぁ」


「キョウちゃんとお揃い、お化粧、上手に出来て良かったね」


「おう」


「折角白くて綺麗なんだからお化粧いらないかもね」


「う」


「髪型、似合ってるよ?」


「あ、ありがとぉ」


「ふふ」


うー、何だか納得出来ねーぜ。

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