閑話226・『お化粧してくれるロリ』

いいよ、そう言われて化粧台の前に座る、鮮やかに手際良く、口紅が唇に走るのを見詰めながら今までの苦労を考えて涙する。


あ、涙したらお化粧が……我慢我慢、俺の自身も俺の一部も俺の信者もどいつもこいつもどうしようもねぇ奴らだがこいつは違う。


仕上がりを確認しながら軽く頷く、うん、自然な感じで悪く無い、そのまま髪を櫛で梳きながら整えてくれる……何時もの癖ッ毛だけど纏めて首の根辺りで括ってくれる、イメージが変わる。


かわゆい、自画自賛。


「アハハ、何時もの様に自画自賛しないのか?」


「うっ、いや、うん……まあ、お化粧しなくてもしても可愛いのは当然だし」


「悲しい事を言わないでくれ、祟木の可愛いお姫様」


「いや、可愛いって言ってるじゃん」


「ポニーテールキョウちゃんの完成だ、もっと伸ばそう」


「聞けよ」


「ツインテールキョウちゃんも完成させたいな」


「いい、これでいい、か、可愛いから」


「ほう」


祟木はそう呟いて朗らかに笑う、こいつには悪意やら敵意やら嫌味やらが欠如している、エルフの事だって自分が興味があるからあそこまで極める事が出来た。


マイナスの感情が欠如しているので純粋に全てを楽しんで邁進出来る、俺には無い能力だ、男前だがお洒落だし、何だか嫉妬しちゃう、しかしあれだな、少しお化粧するだけでイメージ変わる。


ふふん。


「これはナンパされるぞ」


「そうか、キョウはそのままでも口説かれる事が多々あるしな」


「ふふーん」


「どや顔も可愛いな、しかし他の一部達も情けない……キョウ、一人で出来るか?」


「ま、またしてよ」


「了解」


「しかしロリの癖に上手だなぁ」


「人にしてあげるのが好きなだけさ」


祟木は『エルフの国』で育てられた影響で人よりも成長が遅いらしい、恐らく食べていた物や空気の違いだろう………太陽の光を連想させる金糸のような髪が美しい少女だ。


しかも金箔を使用した金糸よりも生命に溢れていて見る者を魅了する、肩まであるソレを側頭部の片側のみで結んでいる……サイドポニー、活発的な彼女にとても良く似合っている、可愛らしいぜ。


瞳も同じように金色だ、見た目は愛らしいのに何処かライオンを連想させるような大らかで強い瞳、肌は研究職の宿命か透けるように白い……俺の一部の『大賢者』も『錬金術師』も白いしな、同じだ。


清潔で清廉でそれでいて覇気に満ちている。


「俺にするのも?」


「キョウにしてあげるのが一番好きかな?」


「うへへ」


「その笑顔が報酬だからな」


口説かれた。

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