閑話225・『光の速度の姉』

「…………ん?」


「姉ちゃん、素で小馬鹿にするのは止めてくれ」


お化粧の事で相談したら首を傾げて次の言葉を促す姉ちゃん、次なんてねーぜ、全部話したぜ?暫しの静寂の後に腹筋を始める姉ちゃん。


筋肉で脳味噌も出来ているのかこのロリ姉ェ、仕方が無いのでもっとモテたいと素直に話す、そして暫しの静寂の後に俺の体に戻ろうとする姉ちゃん。


まてまてまてまて。


「まて」


「……………待たない」


「いや、姉ちゃん御洒落じゃん、可愛いじゃん、お化粧の仕方知ってるかなーって」


「…………むふー」


「あ、あはは」


こう見えて姉ちゃんは可愛いものや小さいものが好きだ、とても女の子らしい思考回路をしている、その点でいえば一番まともだが同時に一番まともでは無い凶暴性も秘めている。


九怨族でありながら髪の色は朱色では無く美しい紅紫(こうし)だ、東の貴族が高貴な色として崇めるソレを腰まで伸ばして中心でバレッタで留めている……活発的な姉ちゃんに似合っている。


瞳は畔の水面のように穏やかだ……色彩も水色で戦いを好む種族としては些か頼り無い、眉は暇な時に『お手入れ』しているので綺麗、時折具現化してもそーゆーことに余念が無い、お、女の子だぜぇ。


吸水性があって着心地に考慮した胴着は洒落っ気の一つも無いが実用性に特化している、そこは自分の職業をちゃんと自覚しているのなっ。


「………んー」


頬に指を当てて何故か唸る姉、いきなり拳が飛んで来る凶暴性MAXの姉なので出来るだけ距離を置いて観察する、お化粧を教えてくれるのかな?どうして悩んでいるのだろうか。


さっさと教えろバカ。


「ん?」


ギロリ、穏やかで優しい瞳だが擬音がおかしい、目に見える、咄嗟に視線を避ける。


死線はやだぜぇ。


「………弟にはまだ早い」


「な、早くねーぜ!乙女の年頃だぜ」


「…………………とぉ」


「げばぁ!?」


声がしたと同時に目の前に出現した姉ちゃんが容赦無く足払いをして来る、浮いた体は横からの攻撃に何も出来ずに容易く吹き飛ぶ、そのまま服を掴んだ姉ちゃんも空中で回転しながら勢いのままに俺の体を地面に叩きつける。


玩具のように愉快な動きで俺は呼吸すら出来無いまま目を白黒させる。


けはっ。


「………ん、姉の方が速い」


「な、なんの話?!」


「………攻撃の話?」


「何処からその話になった!?」


早いのか速いのかわけわかんねーぜ。

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