第443話・『祟木わっしょい』
突き止めたアジトは深い洞窟だった、冷たい風が吹き抜ける、触れると魔力で弾かれる、侵入者を拒む結界にしては粗が目立つ、侵入者を確認するためのものか?
軽く腕を振ると魔力が弾けて雪が溶ける、こんなものでは俺は止められない、止まるつもりも無い、さっさとあの雪山に帰って下山してグロリアと再会するのだ。
ファルシオンの位置を調整しようと柄に手を当てるとカタカタと震える、人外ばかり斬り殺して来たファルシオン、俺と同じで人外の血肉を好む可愛い奴、まてまてまて。
すぐに食わせてやる。
「餌の気配がするぜ、寄り道して正解」
「はくしょん」
「何だそのやる気の無いくしゃみは、大丈夫か?」
「キョウはポカポカだから大丈夫なのだ、寄り道したんじゃなくて寄り道させられたんじゃないのか?」
「うるへー」
「………な、何なのだ」
「お、俺が来たくて来たんだ、罠に嵌められてねーぜ」
「めんどーなのだな、キョウは」
「……入るぞ」
「そーゆー所も可愛いのだ」
「く、口説くな」
「うへへ」
真っ暗闇の空間は来訪者を歓迎していない、しかし灰色狐の細胞を活性化させて暗闇に対応する、後ろから強い力で抱き締めて来る土岐国栖、ドラゴンの血を持つこいつの怪力は容易く人の身を死に追いやる。
人では無い俺は死なないけどな、そんな細かいところでいちいち傷付く、何処までも人間でいたい自分に苦笑する、どうして人間でいたいのだろうか、人間は弱くて脆いのに、とても不思議だ、とてもとても不思議だ。
世の中は不思議な事で溢れている。
「口説くのだ、キョウの事好きだし、隙あらば」
「口説くな、お前、そんな事ばかりしてると祟木になるぞ」
「たたり、ん?」
「祟木、俺の一部だぜ、今のお前のように何時も俺を口説きやがる」
「へー、強いのか?」
「弱いぜ」
「ふへへ」
品の無い笑い方だぜ、何が嬉しいのだろうか?これから戦闘になるのにさ、おかしな奴だぜ。
背負いなおす、お尻柔らかい。
「ひゃん」
「弱いけど可愛くて頭良いぜ」
「う、そ、そうなのか」
嫉妬してるんじゃねーぜ、バーカ。
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