閑話223・『エルフモドキは今日も元気、我が家のトカゲモドキもみんな元気』
「我が君、人材ミスじゃ」
「うぅ、お前だってお洒落じゃん」
「我が君、人外ミスじゃ」
「確かに俺の一部は人外ばかりだけどよォ」
藍染の淡く清らかな青色の髪、柔らかい緑みの青は甕覗(かめのぞき)と呼ばれる美しい色だ、海の水の色に少し似ているソレを手で掴んで持ち上げる、全てを捧げるべき主君を前に藍帆傷は恍惚とした笑みを浮かべている。
俺の頼み事を拒否しといてその表情は何なんだぜエルフモドキ…………少しだけ腹が立つ、ふん、恭しく一礼して俺の前で屈む藍帆傷(あおほきず)、演技めいた振る舞いが妙に似合う、ほっほっと幼女なのに老人のような笑い方。
睨む、夕焼けのオレンジが窓から差し込んで妙に気分が高揚する。
「人間の文化は知っておるよ、一緒に暮らした事もある」
「だったら何でさ」
「化粧をしなくとも困らぬ容姿でな」
「ロリだからか」
「…………美しいから」
「あん?!」
「美しく無いかのゥ」
「くっ」
自分が他者を惑わせる存在と自覚している奴はうっとおしいぜ、覗色(のぞきいろ)とも呼ばれる色合いをした髪を手櫛で整えながら微笑む、こいつは確かに美しい……だから『俺』にした、美しい存在は全て俺にならないと駄目。
甕覗(かめのぞき)の色合いをした髪は鮮やかで美しい、様々な布を何度も何度も藍甕(あいがめ)に浸けては取り出して浸けては取り出して繰り返して繰り返して濃く濃く染めていく、その過程でこの髪の色と同じ色彩が発現する、甕覗は白い布を軽く浸した程度に染めたモノだ、後者の甕覗の由来も甕(かめ)を少し覗いただけという意味で名付けられた色名。
藍染は浸す時間や回数によって色の濃さが変化する、色合いが淡い順に藍白(あいじろ)、白殺し、浅葱、縹、、藍色、紺と名付けられるんだが俺はやはりこの甕覗(かめのぞき)の色彩が一番好きだ、しかしそれを口にする事は無いぜ。
無いんだぜ?
「そ、そんな事を言ったら俺だって可愛いもん、へへん」
「だったらお化粧をする意味が無いと思うのゥ」
「……」
「無いのゥ」
「い、いや、でもさ、人間はどんなに可愛くてもみんな」
「我が君は人間か?」
「う」
「人外ばかりの一部の本体が人間なわけあるまい」
「…………うるせーーー!お化粧教えろ!」
「我が君だってお化粧をしなくても困らぬ容姿なのに」
「う、うへへ、そうか」
「そしてさらに中身も可愛いしのゥ」
何だかんだで躱されたような気がする。
ちくしょう。
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