閑話220・『甘えられるのは好き、ゴキブリは甘えても…うーん、作者はゴキブリ嫌いじゃ無い』
「余にお化粧を?」
「教えてくだせぇ」
目の前の完璧美少女に素直に頭を下げる、完璧、彼女を一言で表現するのならその一言に尽きる――世には様々な美しさが存在するが彼女のソレは豪華絢爛とも言えるものだ……着飾る必要も無い程に。
古代から人間を惑わせた黄金、彼女の金髪はさらにそれに生命の息吹を与えて太陽の光を艶やかに反射する――耳に僅かにかかる程度に切り揃えられた髪型は中性的な雰囲気を強くしている。
前髪はサイドから片面に寄せており清廉で清潔なイメージを見る者に与える………瞳の色も髪と同じく黄金のソレであり猫科の動物の瞳を思わせる鋭く美しい瞳だ、姉さん、タソガレ姉さん。
タソガレ・ソルナージュは俺の姉さんだ。
「ん、んむ」
「姉さん何でも出来るんだろ?」
「ん、んむ」
「って灰色狐が自慢してたゾ」
「……余は………何でも出来る」
形の良い唇がプルプルと震えているのを見て首を傾げる、こんなにも完璧美少女なのに何を恐れる事があるのだろうか?お化粧道具を見せると固まる、暫しの静寂、え、これって駄目なパターンじゃね?
星定めの会、最高幹部タソガレ・ソルナージュ、巨大な組織をこの若さで駆け上がった彼女は妹の前で思考停止状態に陥っている、中性的な容姿だが顔を真っ赤にしてプルプル震える様は年頃の少女だ。
「灰色狐、嘘を――――」
「ま、まて、妹よ」
「待つよ妹」
「う、うむ…………」
「何処までも待つよ妹」
「ふ、不出来な姉を苛めないでおくれ」
「や、やっぱり」
「う、うむ、お化粧の類は苦手だ、お化けより苦手だ」
「基準がわかんねーぜ」
「……………ゴキブリよりは平気だ」
「姉さん可愛いなオイ」
「か、からかうな」
からかってねーし、両手を上下させて言い訳をする姉を見て苦笑する、あれだな、灰色狐は後でお仕置き。
娘に理想を押し付けたらダメだぜ。
「じゃあさ、俺に甘えられるのより苦手?」
「……妹に甘えられるのは得意だ」
「こ、答えになってねぇ」
抱き締められた。
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