閑話218・『陸の河豚とはエルフ』

意味も無く平伏されると困る、佇まいを正しながら咳き込む、あまりに忠誠心のある奴はめんどい、色々とめんどい。


けと平伏している頭が妙に『踏みやすそうだったので』足を置く、勢い良く置いたので鼻が地面にぶつかる音がした、おー、おー、可哀想。


ベッドに腰下ろしながら目の前の下僕を観察する、ごすごすごす、キクタが俺の為に製造してくれたエルフは俺専用の餌で俺専用の『足蹴にされる生き物』なのだ。


顔を上げろと命令すると恐る恐る顔を上げる、こいつは世界でも有数の俺専用エルフ、命令には忠実でどんな命令でも喜んで受け入れる、同胞を差し出すぐらいにはなっ。


エルフを家畜にして増やしてくれてありがとう、クズ、最高のクズ、ゴミクズ、エルフの証拠である耳はもう丸みを帯びていて何処にも無い、美味しかったです、んふふ。


鼻血を拭う事無く幼い下僕は俺を見詰める、俺は見下す、正しい関係性がここにある。


「お化粧の仕方を教えて欲しいのにみんな鼻血の出し方を教えてくれるぜ」


「え、エルフライダー様」


「名前で呼んでって言ったでしょう、恋人みたいに甘く親しく馴れ馴れしく、覚えて無いの?低脳っ」


「へ、あ」


「よ・ん・で」


「き、キョウ様」


「ふふん、親しくは無いけど敬意が見える、まあ、許す」


「はっ」


久々利拿(くくりな)は目を潤ませて恭しく頭を下げる、もう一度踏む、鼻血がもっと出るようにな、その形の良いお鼻が豚さんのように潰れたらきっと面白いだろうと夢想する。


こいつはエルフでは無い、俺に耳を美味しく食されて人間の耳のように丸く丸く加工された、俺のお気に入りだからもっとお気に入りにする権利がある、かつてエルフの集落を長い年月支配していた幼女の姿はそこには無い。


「お前は可愛いなぁ、俺に可愛くなる方法を教えてよ」


「ふが」


「んふふ、踏み付けるとちゃんと鳴けるんだ、次は泣いて」


春に芽吹いた若葉のように鮮やかで薄い緑色の瞳が細まる………森の草花のような色彩、浅緑(あさみどり)の植物の生命力を連想させるソレ、ガンガンガン、それを確認すると飽きてしまった。


何度も踏み付けるとやがてすすり泣くような声が聞こえて満足げにベッドのシーツに波を広げる、楽しい、楽しい事は好きだ、ロリを苛めるのは楽しい、エルフを苛めるのは楽しい、キクタのプレゼント。


良い塩梅。


「う、あ、申し訳」


「長老の癖によわいのー」


「申し訳……申し訳」


「踏みやすい頭はキクタが設計してくれたのかな?」


深緑の色彩が常緑樹の青みの深い緑色を指すのに対して浅緑は春を連想させる柔らかな若葉のような色彩だ、涙目になったソレを見詰めながら笑う、端正な顔は痣だらけで鼻血の量が凄い。


踏んだ数だけ上手に仕上がる、血だらけで痣だらけで、そうか、お前は『そーゆー』化粧の仕方を教えてくれるのか?


良い子ォ。


「きょうさま」


「おっ、顔がパンパンに張れてフグみたいで可愛い」


そーゆーお化粧の仕方もあるのな。

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