閑話212・『自分が誰よりも乙女と理解していない』

「お化粧ォ」


「そだぜ」


向かい合った鏡合わせの自分に元気良く答えるとキョウは大きな溜息を吐き出した、一部がダメなら自分自身だぜ?それにキョウって女子力高いしなっ。


しかし心底嫌そうな顔をしている時点で何か態度悪い、改めて見ると隙の無い美少女っぷりで感心する、それを少しでも俺に分けてくれ、ふふふふふふ。


湖畔の街は既に夕暮れ、キョウの精神を強く反映しているようだ、えっと、これってどんな気持ちなのかな?教えてくれるとありがたいぜ、しかしそのやる気の無さは何故?


俺が可愛くなるとお前も可愛くなるぜ、ん、なんだか矛盾だぜ。


「キョウはさ、鏡を見た事がある?」


「そりゃ、朝とか見るぜ」


「だったらそれで良いじゃん」


「い、意味がわからないぜ……それに鏡なんか見なくてもキョウを見れば良いだけだぜ」


「どぉ?」


白磁のような肌、頬に指を当ててニッコリと微笑むキョウ、どうって言われても可愛いとだけしか言えないぜ、あと少しあざとい、自分が人を魅了する存在だと知っている立ち振る舞いだ。


しかし不快になれないのはそれを打ち消す程の美貌を持ってるって事だろう……うーん、同じ顔なのに表情と所作でここまで違いが出るのか?何だか悲しいぜ。


俺もキョウみたいに可愛くなりたい、ん、何だかまた矛盾だぜ。


「可愛いぜ」


「だからキョウにはお化粧は必要ないのー、このこの」


「わ、わき腹を突くんじゃねぇーぜ、畜生」


「こんなに可愛い畜生がいるか」


「た、確かに………ごめんだぜ」


「キョウはおバカ可愛いなァ、んふふふふ、どうして理解してくれないのかしら、キョウは私なのに」


クルクル回りながら蔑む様に呟くキョウ、だからそのお前の煌びやかな乙女力を俺に寄越せって話だぜ?その蔑む感じはいらん。


頬っぺたを無造作に引っ張られる。


「いたひ」


「おバカさん」


「ひゃめろ、ぶんにゃぐるぞ」


「あははは、舌足らずのキョウかわいいー、子供みたいー」


「ふにゅ」


「キョウはそのまま幼稚可愛いままで良いと思うよ、んふふ」


「ば、バカにしてェ」


「そーゆー反応が可愛いからだよ、自覚しな」


小馬鹿にされてるみたいで少し凹んだぜ。


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