第435話・『きみととうみん』
自家製の巣穴にこもりながら雪が止むのを待つ、錬金術で生み出したそれは二人で丁度の広さ。
立ち上がることは出来無いが這い蹲って移動出来る、ああ、土岐国栖の巣穴を思い出すなァ、獣の皮を編んで作った毛布に包まりながら思う。
土岐国栖は俺の腰に手を回してスヤスヤと穏やかな寝息を………グロリアは大丈夫かな、ここを越えれば会える、ドキドキする、久しぶりだ。
新しい一部の事を教えよう、こんな事も出来るようになったと教えたい、そうすればグロリアは褒めてくれるだろうか?頭を撫でてくれるかな?
いやいや、彼氏としてそんなのを求めるのは違うだろう、何も言わずに俺が抱き締めれば良いのだ、どんな言葉よりも行動で示さないとなっ。
「グロリア、俺がいないと食い過ぎるからなァ」
「きょう」
「お、少しは回復したか」
「きょうは、ぽかぽかなのだ」
微睡みながら土岐国栖はそう呟く………舌足らずな感じと相まって見た目相応に見える、ガキはガキらしくだぜ、苦笑しながら頭を撫でてやる。
思えば一部の体調を心配した事なんて皆無だ、こいつは強みも多いが弱味も多い、本来なら改造して修正するのだが一部としては半端で干渉も出来無い。
駄目な子ほどかわいい理論、現に一部をここまで長い間具現化したのは初めてだ、何とも言えない奇妙な気分、浮気しているわけでは無い、しかし何だか不安。
キョウが殺そうと判断したのはソレが原因か?こいつは望めばグロリアと同じような立ち位置になれるって事だよな?いや、ぜってーねぇーけど、尻尾は腰に巻き付いて来る。
「お前はひんやりだな」
「ぷらすまいなすでちょうどなのだ」
「……最近どんどん変な言葉を覚えて―――困った奴」
「きょうといっしょにいると、ふぁ、へんなことばがいろいろきけるのだ」
「そ、そぉか、え、俺って変?」
「へーん」
もぞもぞと動いて居心地の良い位置を探す土岐国栖、しかし何気無く呟いた言葉に少し唖然とする、お、思えばだ、俺の旅の大半かそれ以上はグロリアと一部とで構成されている。
グロリアは普通に見れば常識人だが打ち解けると生粋の『イカれた人』だ、他人を切り捨てる事を平然とするし罵るような言葉を流れるように綺麗な唇で紡ぐ、あ、悪魔なんだぜ。
そして一部の多くは口悪く性格悪く攻撃的だ、いや、例外もそりゃいるにはいるけどさ、そんな奴らと会話をしている俺も自然と…………いやいやいや、いやいやいやいやいや、嫌だっ。
「そ、その話、詳しく」
「ねむ」
「おい、起きろ、おい」
「いや」
お、俺の、本体の命令を完全に拒否する、なのに、どうして。
ニヤニヤしてしまう。
「お、おい」
「うるさい」
お前はこのままがいいよ。
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