第433話・『おちち』

キョウの顎を指で撫でながらどうしようかと溜息を吐き出す、グロリアに再会する前にあいつを体内に……騒ぎそうだ。


そしてあいつには『抵抗』が出来る、他の一部とは根本的に違うのだ、頭を悩ませる問題だぜ、自然と溜息も多くなる、お花畑の蜜の匂いが思考を奪う。


いや、これはキョウの匂いか、何処までも甘く人を惑わせる匂い、あれ、もしかして俺もこんな匂いなのか、すんすん、自分で嗅いでもわからない。


「あれ、もしかして俺って甘い匂いする?」


「ミルクのような匂いだよ」


「お、俺は赤ちゃんなのか……凹むぜ」


「凹んだ分はキョウで補ってェ、うりうり」


頭を擦り付けて来るキョウ、僅かに膨らんだ胸に僅かな痛み、しかし気にするような事でも無いので無視する、しかし自分で僅かと表現すると凹む、


ちらり、キョウの胸を見る、んー、俺と同じサイズのはずなのに少し大きいように思える、あれか、こいつの方が女の子っぽいからそう見えるだけか?


「気のせいか、キョウのオチチの方が大きく見える」


「なぬ、オチチとな?」


「そうだぜ、何だかムカつく」


「いたたたたたたっ、ちょ、キョウっ」


乱暴に掴んでニギニギ、性的な雰囲気など皆無だ、そういえば最近あんまり他の一部とエッチしてないなァ、んふふ、何だか大事に愛されたい、ササか炎水でも具現化するか、くふふ。


邪悪な笑みを浮かべて妄想を膨らませてるとそれを遮るように胸に痛みが走る、うげ。


「いてててててててっ」


「あん、そっちの声を希望していないよォ」


「揉み方が雑だぜっ」


「どの口が言うのォ」


「この小さくて可愛い口だぜ」


「あら、生意気ィ」


「お前も同じ口で可愛いぜ」


「と、突然口説くなァ」


そう言われても一緒なんだから仕方無いぜ?ふと誰かの手に肩を掴まれてるような違和感が、な、何だぜ。


「ん、あ、れ」


「おやぁ、どうやら現実世界の爬虫類のようだねェ、他の一部は遠慮して干渉しないのに、まったく」


「うえぇぇ、あ、あいつそんな事が出来るのか?」


「キョウが私に殺させないから……いってらっしゃい」


「ま、まだキョウの胸を揉むぜっ」


「…………自分のを揉んできな」


くすくす、鼻で笑われた。

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