第432話・『空飛べ、やだ』
お花畑が広がっている、睡眠と同時に湖畔の街に訪れたが素敵な世界だ。
俺とキョウの精神を具現化する不可思議な街、二人の心境はお花畑ってか?んふふ。
街のあちらこちらにお花畑が広がっている光景は中々にインパクトがある、前まで何があった所かな?
キョウの気配を感じて足を進める、仕上がりはどうだろうか、まあ、このお花畑を見れば会わなくてもわかる、どれもこれも全て血のような色。
お花畑の下には死体が埋まっている、だからこそこのような美しい色合いになる、血は誰の血だろうか、キクタの血はまだ早い、一緒にな、ふふ。
「キョウ」
「おお、背後から抱き付くんじゃねーぜ」
柔らかな感触と同時に細い腕が首に絡み付く、そのまま倒れ込む様に体重をっっ、うげ、吐きそうになるのを我慢する、花を汚して楽しむ趣味はねぇぜ。
必死で我慢する、ぶらんぶらんぶらん、一回転して正面に来るキョウの顔、なにこの新しい必殺技、けほっけほっ、喉を傷めて咳が出る、どうしようもねぇぜ。
「お花畑が見えたぜ」
「目の前にあるよォ」
「いや、これとは別物のお花畑だ」
「お花畑はお花畑だと思うよォ」
「お前の必殺技で見るお花畑はここより血の色合いが強かったぜェ」
「あはは、なにそれ」
そのままお姫様抱っこ、軽い、軽過ぎる、肉を食え、エルフを食え、そういえば何時も餌を食うのは俺でキョウが食事をしているのを見た事が無い、炎水の時は二人一緒だったよな。
記憶の混濁も見られない現状に満足する、キョウは自分の一部能力を奪われているのに不満を口にせずに幸せそうだ、俺に奪われる事に快楽を感じている、全て奪い尽くすのはまだな。
そのままお花畑を歩く、ふふ、全てが赤色で統一されていて確かに美しいが面白味は無い、俺達の精神は赤で統一されている、血の色で肉の色で死の色、二人一緒に死んだよな、見捨てられて。
キクタ。
好き。
殺したい。
「んん」
「どしたーどしたー」
「いや、今は現実世界の方では絶賛遭難中なのを思い出した」
「現在進行形で?」
「現在進行形で」
「ふーん、お空を飛べばいいのに」
「少しでも人間らしくいたいのさ」
「あはははは、無駄な我慢だね」
「そうか?」
「そうだよォ、一度だって人間だった事は無いのに」
「そうか」
知ってるよ。
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