第428話・『こわしてあそぼう』

キョウが何も無い空間で傅くのが見える、いや、見下している、これでいい。


足にキスをするキョウを見詰めながら現実世界でも体の支配権を移行できたとほくそ笑む。


キョウはうっとりとした瞳で何度も何度も素足の俺にキスをする、ああ、全ては今まで通り、俺の大切な人を殺そうとしたこいつを許す。


「俺が俺を嫌うなんてあり得ないんだぜ」


「ぁぁ、キョウ」


「キクタが全部悪い、全部……だからキョウがちゃんとキクタを傷付けるんだよ?」


「は、い、愛してる、キョウ」


「俺もだよ」


ゆっくりと暗闇が消えてゆく、何も無い虚無が広がる空間へと移行する、あああ、これでいい、体を取り返すことが出来た、これで一部を殺さなくて済む。


これでキョウはまた俺のモノ、キクタなんかに恩義を感じやがって、ううん、キクタも好きだけど、今は殺したい、あれ、そんな、キクタの事は大好きだけど今は殺したい。


キョウとキクタ、両方好きなはずなのに、キョウと一緒にキクタを殺したい、路地裏から出してあげない、キクタもずっとここでいっしょ、ずっと、いっしょ、キクタもずっとここでいっしょ、ずっと、いっしょ。


―――――キクタもずっとここでいっしょ、ずっと、いっしょ、キクタもずっとここでいっしょ、ずっと、いっしょ、キクタもずっとここでいっしょ、ずっと、いっしょ、キクタもずっとここでいっしょ、ずっと、いっしょ、キクタもずっとここでいっしょ、ずっと、いっしょ。


―――――キクタもずっとここでいっしょ、ずっと、いっしょ、キクタもずっとここでいっしょ、ずっと、いっしょ、キクタもずっとここでいっしょ、ずっと、いっしょ、キクタもずっとここでいっしょ、ずっと、いっしょ、キクタもずっとここでいっしょ、ずっと、いっしょ。


―――――キクタもずっとここでいっしょ、ずっと、いっしょ、キクタもずっとここでいっしょ、ずっと、いっしょ、キクタもずっとここでいっしょ、ずっと、いっしょ、キクタもずっとここでいっしょ、ずっと、いっしょ、キクタもずっとここでいっしょ、ずっと、いっしょ。


膝が折れる。


「キョウっ、大丈夫?!」


「きくた」


「うん、一緒に傷付けよう、あの子を」


「きくたはいなくなるから、あしの、すじを、きろう」


「キョウ?」


「ろじうらからいなくならないように」


「記憶が、混濁しているの?」


光が弾ける、意識が定まる。


そう、あいつは俺を見殺しにした、見捨てた、大好きだったのに見殺しにした。


一生一緒。


一緒一生。


いっしょ、いっしょう。


「おれはさみしいから、かなしいから、きくたをにがさないもん」


「そう、そうだね、キョウ」


そうだよ、キョウ。

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