第426話・『いい子いい子、さあころそ』

二人で向き合う、結局は一人なのだけど、涙を流すキョウを抱き締めて笑う。


俺の大切なモノを奪おうとした女、今までも奪って来た、そしてそれに俺はどう応えた?それはクズらしい反応、俺は生まれてからずっとクズ。


自覚はある、そもそもエルフライダーが誰かを幸せに出来た事があるのだろうか、そんな存在がいるとしたら目の前で泣く女の子ぐらいだ、身長も体重も精神も全く同じ。


俯いたキョウの頬を両手で包んで向かい合う、涙してる、胸が痛む、俺は世界で一番大切な俺を泣かせている、許せない、そんな自分自身が許せない、だからキョウに想いを告げる。


クズだけどさ。


「キョウが俺の大切なモノを殺そうとしても嫌いにならないからな?」


「――――」


「大切な人が大切な人を傷付けても恨めないぜ、世の中そんなに簡単じゃねぇ、俺自身も」


「私はっ、キョウだけいればいのに、キョウはっ」


「そうだな、外で勝手に女をつくるわけだ……すまねぇ」


「謝らないでよォ」


ぐしゅぐしゅ、思えばキョウの泣いている姿ってレアだなぁ、小刻みに震える華奢な体、よくもまあ一部全員に反対されながらもここまでの事をしたぜ。


俺を支配して一部を殺させようだなんて、ちょっと普通じゃ無い、しかしキョウだけでそんな事が出来るか?そもそも湖畔の街の地下に封印するように命じたはず。


キクタか、俺に逆らったか、ふふ。


お仕置きだ、お仕置きだ。


許さない。


「でもキョウは特別だから許す、だってあの路地裏から消えたのはキクタだし」


ざーざーざー、そう、あいつはまた俺を裏切るのか、うらぎってうらぎってうらぎってうらぎって、許さない、キクタ、キョウを封じろと命じたろ。


その命令に従わないからキョウがこんなにも傷付いて、なぁんにも悪く無いからなキョウは。


なぁんにもぉ。


「キョウ、あ、あのね、私」


「全部許す、キョウは何も悪く無い」


瞳を見詰める、自分自身を侵食する触手が見える、刺し込んで融合して融合して溶けあって全てを許す。


お前だけだから、全てを肯定してやれる、だからお前も何時もの様に俺を肯定してね、俺を愛してね、じゃないと酷いよ。


キョウ。


「キクタがお前を出したんだな」


「き、キョウ」


「じゃあ、俺とお前でキクタをお仕置きだ、半殺しだ」


「あ」


「キョウは許すよ、キクタは許さない、一緒に出来るよね?」


「は、い」


良い子。

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