第423話・『死ねない理由は自分で探せ』

言葉の意味がわからずに思考が停止する、やがて意味を理解すると胸にわき上がったのは純粋な怒りだった、衝動のままにファルシオンを振るう。


こいつを殺さないと自我を保てない、こいつは一部風情、いや、一部にもなれていない下位な存在の癖にキョウそのものである私を侮辱した、許せるわけが無い。


殺さないと、嫉妬?誰が誰に嫉妬している?私がお前に嫉妬しているだと?気に食わない、殺さないと、殺さないと、殺さないと、侮辱的な言葉を吐き出したお前を殺す。


土岐国栖如きが私を侮辱するな。


「はははははは、何と、何とわかりやすい、メスらしいのだ」


「へえ、まだ言うんだ」


「言うさ!それが原因で殺されかけてるんだから当然なのだ」


「殺されかけてるのでは無くさっさと殺されてよ」


「それは無理な相談なのだ、キョウが悲しむので」


「また、そうやって私の心を乱す」


「勝手に乱れてろ、あははは、キョウを奪われる事が怖いのだ?」


「うるさい」


力も技術も思考も全てが上のはずなのに攻撃が当たら無いのは他の一部達が体を奪おうと蠢いているからだ、キョウが悲しむと他の一部もわかっている。


しかしそれを制御するために精神を統一させる、落ち着け、キクタがこちら側にいる時点でこの肉体は私のモノだ、私とキョウのモノだ、こいつを殺してキョウに返す。


こいつを殺しさえすればキョウに会える。


「そうやって何時もキョウの大切なモノを奪って来たのか?」


「愚かな事を―――自分がキョウのなに?」


「大切なモノなのだ」


「キョウの大切な人は私だけだよォ」


「お前はキョウの生理現象だろうが」


「そぉ、キョウと一つ、お前のような半端ものが出張るんじゃないよォ」


「半端だからキョウと恋が出来るのだ」


他人だからキョウと恋愛が出来る、グロリアのように、そう、それは私が羨んでも望んでも手が届かないモノ。


それを半端な一部風情が手に入れた、それを私では無い存在が手に入れた、グロリアと同じようにキョウに。


しかも私と同じようにキョウの『モノ』としても認識される。


羨ましい。


やめろ。


私の。


ソレ。


「半端なままここで死ねよォ」


「半端になれないから恋が出来無いのだろ?」


うるさい。

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